この作品は、2010年度の千葉県八千代市の成人式を企画・運営した「八千代市成人式プロジェクト」のメンバーの活動を紹介したドキュメンタリーである。
同市のこのプロジェクトは10年前、成人を迎える若者たちが自ら考え、行動して、成人式の運営に取り組むことで、社会人としての最初の貴重な体験となることを目的に始まった。新成人を中心に、市の青少年課の職員や地域活動団体の若者が協力して、プロジェクトの実行にあたる。前年の9月から、成人式の本番当日まで、イベントの企画や、会場の装飾などを手がけ、4か月間の準備期間をかけて成人式を創りあげていく。
本作のねらいは、このプロジェクトのメンバーとなった若者たちが団結し、成長していく姿を記録することであった。15分の制限時間(千葉県メディアコンクール)にまとめるため、メンバーのリーダーとなった吉田峻君にスポットをあてて構成することにした。
番組は、前年の9月10日に開かれたプロジェクトの第1回目の会議の模様から始まる。吉田君がリーダーに立候補する様子、式のテーマを話し合い、新成人たちからさまざまな意見が提案される。会議後に吉田君に意気込みを語ってもらう。10月は話し合いが続き、11月からは企画班と装飾班に分かれて準備作業が進められた。12月には吉田君らが成人式会場を下見して、ステージや照明をチェックしていく様子をカメラに収めた。本番も1週間後に迫り、装飾の制作やステージ進行の打ち合わせなどが追い込みとなる。式の前日は、装飾班の手による装飾で会場を飾り付け、ステージでは真剣な表情でリハーサルに取り組む。ここで吉田君に現在の心境を語ってもらう。いよいよ成人式の当日、式の進行をステージの表と裏に置いたカメラで追った。最後にステージから全ての来場者に挨拶をするプロジェクトのメンバーたち。その一言ずつを記録し、吉田君にインタビュー、メンバーの集合写真で番組をまとめた。
本作では、プロジェクトのメンバーたちが1つの目標を達成するために力を合わせる懸命な姿をカメラに収めたいと考えた。準備から式当日までの4か月間、当初こそ遊び感覚もあったメンバーが、次第に真剣な顔つきに変わっていき、プロジェクトに向き合っていく様子を目の当たりにすることができた。この活動を通して、自ら考え決断し行動するうちに、社会人に大切な責任感が芽生えていった姿は、「成人」にふさわしいものだと思え、このプロジェクトの意義が実感できた。
反省点としては、同じ部屋で繰り返される会議の場面が単調になりがちだったこと、プロジェクトの全体像を追うなかで、リーダーの吉田君への密着度が薄れてしまったことなどである。もっとはやい段階で番組構成の的を絞り、主となる対象に肉薄して取材すべきであった。プロジェクトを通じた若者の成長のドキュメントにするはずだったが、今回のような撮影や構成では、一般的な行事の記録ビデオのようになってしまった感がある。映像番組にメッセージをこめて伝えるということの難しさを実感した。
本作は、平成22年度千葉県メディアコンクールの佳作に入選した。