Whippin'postミュージックビデオ「UNEXPECTED」の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成23年度卒業研究概要集] [平成23年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成23年度卒業論文
Whippin'postミュージックビデオ「UNEXPECTED」の制作
太田 敦士

Whippin'post(ウィッピン・ポスト)は、2010年に結成され、都内のライブハウスを中心に精力的な活動を行っている3人組の実力派バンドで、アルバム制作やラジオ出演も果たしている。彼らのプロモーション映像を制作するにあたり、近年、著しく性能が向上したスマートフォンやモバイル端末の動画撮影機能を用いてミュージッククリップにまとめるという新たな映像表現手法を探ることにした。ハイビジョン画質の動画を撮影できる端末を1人1台持ち歩くようになったという時代性を、作品の中にとりこむことが、その狙いである。

最初に、このプロジェクトの構想をバンドメンバーに伝え、本作のための新曲『UNEXPECTED(アンイクスペクテッド)』を作詞、作曲してもらった。2011年11月5日、東京都練馬区の光が丘公園にバンドメンバー3人と撮影協力者23人を集めて撮影を行った。これらの協力者に、iPhone4をはじめとする高画質撮影が可能なスマートフォン、フューチャーフォン、デジタルカメラなどを持参してもらい、ほかに通常のディジタルビデオカメラ2台も併用して、計23台のカメラで、公園内で演奏するメンバーを取り囲んで、一斉に撮影した。こうして収録されたマルチアングルの素材をノンリニア編集機で編集し、1本のビデオクリップとして完成させた。

本プロジェクトの構想は2010年12月からあたためていたが、当時はハイビジョン画質で撮影ができる携帯端末の所有者が少なく、撮影が実現するまでの1年間、その普及を待った。また、東京都が管理する公園等における撮影は一部を除いて原則15名以下で行わなければならないという条例があり、大人数での撮影を行う本プロジェクトを実行できる場所を探すのに苦労した。5ヶ月ほど都内に足を運んでロケハンや許諾申請を行った結果、光が丘公園での撮影が実現した。撮影当日は、撮影およびエキストラとして参加して下さった方、当日の進行を担当してくれたスタッフなど、総勢30名近い方々に協力してもらい、狙い通りの撮影を行うことができた。

しかし完成した映像は、公園の一隅で演奏しているグループを、ただ携帯で撮ったというだけにしか見えず、期待したインパクトやメッセージの感じられるようなものではなかった。プロモーションビデオとしても、映像実験としてもこれという成果が見えず、作り手の力量不足が露呈した結果となった。スマートフォンブームの表層的な言辞に惑わされて、アイデアを形あるものにするための地道な努力と研究を怠っていたことを謙虚に反省することで、今後の表現活動における戒めとしたい。本作に協力してくれたWhippin'postのメンバー、多くの協力者とスタッフに心より感謝申し上げる。