ギター音の歪みが旋律の明るさに与える影響 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成23年度卒業研究概要集] [平成23年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成23年度卒業論文
ギター音の歪みが旋律の明るさに与える影響
池田 和成

音楽において、長調、高い音域、早いテンポであれば明るく、その逆であれば暗く感じられるという。このことに関して過去の論文によると、これらが明るさに及ぼす影響の定量的関係はある程度明らかになっている。しかし、音色が旋律の明るさに与える影響に関しては未だ解明されてない部分が多い。過去のエレキギターを用いた音色の歪みが旋律に与える影響の実験では、被験者の大部分がギターの音色の歪みの種類より、長音階、短音階によって旋律の明るさを判断していた。だが、その論文に実験に使用した音源が残っていなかったり、使用機材の説明やその設定に不明なものがあったりする等、実験方法に不明な部分があったのと、歪みの種類が旋律の明るさに影響するだろうという自分の想定していた結果とは少し異なっていると感じたので、再実験をするために実験を行った。

何故実験を行ったかというと、J‐POP、ロックに関わらず、ギターは様々な音楽で使用されている。その音色は幅広く、低い音や高い音、歪みのある音や無い音等、多種多様である。この実験は、ギターの音色の歪み方、長調・短調の違いが、短い旋律の音楽的な明るさに与える影響を調べるものである。

実験では8つの音を使って実験を行うことにした。実験に使用した音については、まず長音階と短音階の原音を録音した。その原音と、原音をエフェクターで歪ませた3種類の音である。この3種類の音はそれぞれ歪み方を変えている。

これらの音を、音楽の経験や知識の有無を問わずに選出した7名の被験者に聴かせ、感じ取った「明るさ」を評定してもらった。分析は2つの音を組み合わせたものをランダムに被験者に聴かせ、前後の音を入れ替えたものは別のものと見なして評価するシェッフェの一対比較法 (浦の変法)を用いた。この実験では組み合わせの数は56通りになる。被験者に2つの音を聴いてもらい、7段階(前の方が非常に明るい〜後の方が非常に明るいまで)の評価をしてもらった。被験者の回答に信頼性があるかどうか確かめるために、一人について2回ずつ実験を行った。

実験の結果として、7人中2人が音階および歪みによって旋律の明るさに違いは無いと感じていた。そして3人が歪んだ音色によって旋律が明るくなったと感じていた。逆に1人が暗くなったと感じていた。長調や短調が旋律の明るさに影響していると感じていたのは1人だけであった。