教育ビデオ『アサガオを育ててみよう』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成22年度卒業研究概要集] [平成22年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成22年度卒業論文
教育ビデオ『アサガオを育ててみよう』の制作
矢部 良太

本作は、アサガオが、種から発芽し、開花を経て、新しい種ができるまでを映像で観察するという、幼児を対象とした教育ビデオである。インターバル撮影によるアサガオの成長過程の紹介を中心に、やさしい解説やアニメーションとともに、楽しみながら学んでもらうことが目的である。

インターバル撮影とは、ビデオカメラで自動的にコマ撮りを行うことによって、長時間にわたる植物の成長を、時間を縮めて見ることができる技術である。以前、この技法で撮られた映像を見て、植物が短時間でダイナミックに生育していく様子に感銘を受け、自分でもやってみたいと思ったことが、本作に取り組む動機となった。また、番組の進行役として2匹のウサギのキャラクターを登場させ、アニメーションの技法で動かし、合成した。このように本作は、インターバル撮影やアニメーション合成の技術を駆使して、幼児が親しめる教育番組の制作に挑んだものである。

番組は、アサガオを育てるために必要な鉢や土、支柱などの道具を揃えるところから始まる。鉢底にネットを敷き、軽石と土を入れる。人差し指で土に穴をあけ、種を蒔き土をかける。ここまでは通常モードの撮影だが、種を蒔いてから2週間後、発芽するタイミングを見計らってインターバル撮影を開始した。最初に発芽したものを構図の中心にして撮影を続け、ツタが伸びてきたところで支柱を立てた。種蒔きから2ヶ月後にはツボミがつき、一つのツボミをクローズアップにして開花の模様をインターバル撮影した。その後、花が枯れ、種が出来ているところを見せ、ガクが膨らんで茶色く変化していく様子を撮影、手でガクを割り、新しい種ができたことを見せた。番組では次に、アサガオを押し花にする方法についても紹介する。準備するものや、作業の様子を示し、最後にできあがった押し花を額縁に入れ、2匹のウサギが、「また来年も楽しみだね」と語って、番組をまとめる。

本作の見どころは、やはりアサガオの成長過程のインターバル撮影である。インターバル撮影のための専門的な照明機材などは所有していないので、自宅で栽培したアサガオの鉢に、終日、室内照明をあてて、発芽や開花の模様を撮影した。インターバル撮影は初めての体験であり、不安もあったが、再生してみるとみごとに記録されていてほっとした。こうして撮影した素材を編集機でつなげ、再生速度も変化させることで、成長の様子をさらに滑らかで生き生きとしたものになるよう工夫した。

本作品を見た幼児には、アサガオの小さな種が土を持ち上げ芽を吹く様子など、小さくとも必死に生きようとする姿を心に刻んで欲しいと思った。その後の成長過程も、どうしたら幼児の興味を惹きつけていけるか考えながら構成した。番組の要所に大きめの文字でテロップを出し、漢字にはふり仮名をつけた。ウサギのキャラクターは、フラッシュを使って口や手を動かし、目の瞬きなども加えて、いきいきと話しをしているように見せた。使い慣れないソフトであったために、動きのバリエーションが乏しくなってしまったことは反省点である。また、番組の後半の押し花作りのシーンは、やや長すぎたように感じられる。もう一段の構成の工夫が必要だったと思う。

これまで制作してきた作品では、特定の年齢層を対象としてこなかったが、今回、幼児を対象としたことで、番組全体を明るく楽しい雰囲気とし、気持ちが優しくなるように展開していくことに留意して、映像にもナレーションにも、さまざまな工夫を凝らした。視聴対象を限ることの難しさを感じるのと同時に、そのことで表現や内容を明快なものにできるということも理解できた。