この作品は、千葉市若葉区源町にあるプレーパーク、「千葉市子どもたちの森公園(通称こどもり)」を紹介したドキュメンタリーである。
プレーパークは「冒険遊び場」とも呼ばれ、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、禁止事項をなくして子どもの自主性を育てていこうという、比較的新しい考え方で設置された公園である。同公園の計画は、2001年から市の公園緑地部緑政課と地域住民とが協議を重ねつつ進められ、2007年4月にオープンした。その後の運営は住民有志による「自然遊びわかばの会」のメンバーや、プレーリーダーの若者たちによって支えられている。われわれは2010年6月から同年10月下旬まで、この公園に通い、ここで遊ぶ子どもたちの姿を追いかけた。
番組は、子どもが泥プールに飛び込む場面から始まる。つぎに、公園のコンセプトを要約して、テロップと映像で説明する。火遊びや木登り、長大なロープで吊り下げられたブランコなど、大人の目にはヒヤリとさせられるような遊びに夢中の子どもたちの表情は、みな輝いている。公園に廃材を乗せたトラックがやってくる。子どもたちは、材木を切ったり釘を打ったりすることに熱中、力を合わせ`基地'まで作ってしまう。夏、子どもたちはプレーリーダーの協力のもと、板囲いの自家製プールを作って水遊びに興じる。さらには地面に穴を掘って水を貯め、泥プールを作ると、我先に飛び込んでいく。公園に千葉市職員の鈴木さんが訪れる。鈴木さんが虫博士となって、子どもたちに「虫クイズ」を出題する。鈴木さんはインタビューに答えて、「子どもたちに自然の観察や発見の楽しさを伝えたい」と語る。続いて番組は、プレーリーダーの役割を説明。その一人、`まさ'さんが、この公園での発見や、公園運営のコンセプトを語る。最後に、「地域のみんなでつくり、みんなで成長していく。それが子どもたちの森公園です。みなさんも、ぜひこの森に来て、感動と冒険を共有してください。」というナレーションで番組をまとめる。
われわれは取材に際し、子どもたちがのびのびと遊ぶ自然な姿をカメラに収めることが、最も重要だと考えた。常に子どもの目の高さでカメラを構えるといった手法もそうだが、何よりスタッフ自身が子ども一緒に遊び、馴染んでもらうことで、カメラを意識しなくなるように努めた。スタッフが裸になって泥プールに入り、一緒に泥だらけになっている場面でもわかるように、この努力は一定の成果をあげたと思われる。
しかし、編集の段階になって、子どもや公園関係者に、もっと積極的にインタビューし、素直な肉声や、当事者としての想いを収録しておかねばならなかったことに気づかされた。また、例えば、子どもたちが意見を出し合って遊びのルールを決めていくプロセスなど、眼の前で起こった大事な場面もカメラに収まっておらず、取材現場での判断力や構想力の不足を思い知った。「この番組の主役は子ども」という信念で取材していたが、運営を支える地域の人々や、プレーリーダーの活動や想いなど、どこまで描けばよいのか常に悩んでもいた。番組をまとめてみると、そうした社会的、客観的な視点や訴えるところが弱い作品になってしまい、子どもたちと仲良く遊ぶことに熱中するあまり、取材対象や番組の全体像を把握する努力が足りなかったのではないかと反省した。
しかし、完成後に公園内で行った上映会では、作品に登場する子どもたちや地域の人々も含めて、多くの観客から好評価を頂くことができ、この公園の意欲的な試みが、地域ぐるみで子どもを育み、生き生きとした地域づくりに結びついている姿を、たしかな映像記録として残すことには成功したのではないかと思われた。
本作は、2010年度の千葉県メディアコンクール(主催:千葉県教育委員会)で、優秀賞・NHK千葉放送局長賞を受賞した。このような大きな成果も、われわれがあの炎天下、のべ30日余の公園通いを続けた苦労が報われたものと自負している。