この作品は、台湾の少数民族、「泰雅族(タイヤル族)」を紹介したドキュメンタリーである。
このような少数民族のことを、台湾では、古来から台湾に住んでいた人々という意味で「原住民」と呼んでいる。彼らは、民族固有の言語や習俗を保存・継承しており、台湾の旧い文化を表現できる貴重な存在で、泰雅族はその代表的な民族の一つである。
作品ではまず、泰雅族が住む「烏来郷」の山を訪ね、台北などの都市とは大きく異なる景色と風土を紹介する。ここから小さな山林鉄道に乗って、泰雅族の部落に入る。そして、泰雅族の食文化である「小米酒」と「馬告」を紹介する。続いて、泰雅族の踊りを見に行く。この踊りの中には、泰雅族の服飾や生活習慣がよく表われている。泰雅族の人たちに踊りを教えてもらい、一緒に踊る。最後は泰雅族の人々にインタビューし、踊りに使った楽器の音を聞く。
この作品のポイントは、日本人があまり知ることのないであろう台湾の少数民族の文化について紹介したことである。彼らの食文化や踊りは、日本の視聴者にも関心をもって見てもらえることと思う。
苦労した点は、本作の撮影期間は、台湾の天候が悪い季節で、雨や台風のために、山林鉄道が運休してしまったことである。そのために別ルートを使って、何度も烏来の山を登らなくてはならなかった。
反省点は、今回の撮影には外部マイクを使わなかったことである。山の上では風の音もあるし、泰雅族の部落では、各所のスピーカーから大音響で民族音楽が流れていたため、レポーター役を務めてくれた妹の声が、ほとんど聞きとれなかった。音の状態が悪いせいで、撮影してきた素材の多くが使いものにならず、番組の構成に必要な素材が足りなくなってしまった。外部マイクを使うことの重要性がよく分かった。
私自身が台湾人でありながら、台湾の少数民族のことをあまり知らなかったが、泰雅族の生活や踊りを見て、彼らの情熱や活気に触れたことは、貴重な体験であった。
泰雅族の人々は、現在、生活の糧を得るために、烏来の山で民族料理や酒を販売したり、民族舞踊を披露している。かつての台湾では、彼らを「山地人」と呼んで貶めてきたが、現在の彼らは、自分たちを「原住民」と呼んでもらいたいと希望している。泰雅族の人の話によれば、入れ墨をする人はだんだんいなくなり、伝統楽器を演奏できるのは高齢者に限られるということで、このような少数民族の文化を保護し、受け継いでいくことの難しさや課題についても考えさせられた。作品制作を通じて、自分の国の少数民族について、深く知ることができた。