ドラマ『世界をつかもうぜ』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成22年度卒業研究概要集] [平成22年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成22年度卒業論文
ドラマ『世界をつかもうぜ』の制作
上村 開地
真塩 竜之介
東ヶ崎 貴博

この作品は、3人の若者が、それぞれの思いや過去を抱えながら、芸人としての修行を重ねていくなかで、互いの友情を深めていくというドラマである。

サラリーマンの佐々木と芸人の山下は、お笑いコンビを組んでオーディションを受けるが、いつも落とされてばかり。そんなある日、山下は、公園で自分と同じように溜息をついている田中と出会う。田中はヤクザの下っ端で、やはり自らの人生に悩んでいた。山下は田中を連れ帰って佐々木に紹介。佐々木は田中の風体を訝るが、田中は「自分はフリーター」と嘘をつく。三人は一夜の酒で意気投合、トリオとなり、アドリブだけでオーディションに臨む。あえなく落ちた三人だったが、芸の面白さに目覚めた田中は、きちんとした台本を作って再挑戦しようと言いはじめる。三人の友情は深まり、決意を新たにした佐々木は、サラリーマン勤めを辞めてしまう。台本を書き、練習を重ねていたある日、田中は、自分は実はヤクザであることを告白し、自分が足を洗うことを親分が許してくれないのではないかと怯えはじめる。佐々木と山下は、それなら自分たちが一緒に交渉してやると請け負い、三人でヤクザの事務所へと出向く。三人の申し入れに、ヤクザの親分は、「指一本ずつだ」と命じる。佐々木と山下は、田中のためならば、と一度は覚悟するが、いざとなると、とても指を差し出せない。そこで親分が、「俺を笑わせてみろ。俺が笑ったら許してやる」と言う。三人は親分の前で必死のコントを開始する。少しも笑おうとしない親分を前に、汗だくの熱演を繰り広げる三人。最後まで笑えなかった親分は、とうとう小刀を振り上げる。が、土壇場で田中が発した一言に親分がついに吹き出し、指ツメは免れる。ヘトヘトになりつつも、真の友情を確かめ合った三人は、いよいよ芸人への道をまっしぐらに目指す。大きなコンテストの日を迎え、「世界をめざそうぜ」と気合いを入れ、三人はステージに向かって歩いていく。

この作品は、サラリーマンと芸人とヤクザという、一風変わった三人組の奇妙な友情を描いた物語である。共に努力し、自分の大切なものさえ投げ出してでも友を助けようという彼らの姿をコメディタッチで描くなかから、真の友情の大切さというものを表現したいと思った。

反省点は、シナリオ段階での人物造形が明確でなかったことに加え、出演者が自らの役作りや演技練習をほとんどしないまま撮影に入ってしまったことである。共演者のスケジュール管理も行き届かず、現場の進行は常に滞った。何より主役3人の演技の質が、この物語を支えるには不十分であった。この3人が、もっとハイテンションで、メリハリのついた演技をすれば、もう少しは観客の心に伝わる作品になったのではないかと悔やまれる。

本作の製作に際しては、ほかのゼミ生らが、撮影・録音などに協力してくれたことで完成にこぎつけることができた。この体験から、映像作品は一人では作れないものだということを痛感し、あらためて友情の大切さを噛み締めた。