近年、日本は高度情報通信社会になったと言われ、身近な部分からもその事実を簡単に感じ取ることができるようになった。それは、例えば携帯電話やパソコンの普及率の高さや、今やパソコンを使わない会社はないと言われることなどが挙げられる。もちろん、社会人にだけこの「情報化」の波が押し寄せているわけではない。若年層、つまり学生などにも関係のあることであり、それを顕著に表しているのが、高等学校での教科「情報」という必履修科目の設置である。もちろん、高等学校だけでなく小学校・中学校でも情報教育は実施されている。このように、例外なく教育現場でも「情報化」が進んでいるのである。
教科「情報」の教職を履修し、教育実習という形で実際に高等学校の教壇に立ったことで、この教育現場の「情報化」を体験した。そこで注目したのは、学習者の「学習意欲」と「考える力」の2点である。
特に高校生以下の現代の若年層にとって、あらゆるモノの「情報化」は当たり前となっており、つまり携帯電話やパソコンは「辞書」であり「答え」なのである。しかし、教育現場では、これら「情報化」の波が全て良い方向に向かっているわけではないと感じた。学習者は、簡単に答えが得られないとなると、考えようとはせずすぐに答えを求めようとするのである。つまり、「考える」ことをしなくなっているのである。これを「考える力」の低下とすると、この「学習意欲」と「考える力」は密接な関係にあるということを実体験を通じて感じたのである。
そこで、本研究ではこの「学習意欲」を向上させ「考える力」を育成することを目的とした教材を制作するに至った。学習者の興味や関心を引きつける必要があり、それには色味があり動的である教材が適していると考え、本研究ではマルチメディア教材の制作を行い、その後制作した教材の効果を調査した。