この作品は、(株)高千穂ネットワーク(t-Net)、(株)ソニー・ミュージック・コミュニケーションズ(SMC)と、東京情報大学映像ゼミナールとの産学共同プロジェクトとして、ダンスユニット"Green Style Band"のステージ・パフォーマンスを収録するとともに、同ユニットのイメージ・キャラクターをアニメ化して、これを実写と合成することで完成させたビデオクリップである。
"Green Style"は、環境問題への意識の高まりにこたえて発足した市民エコロジー活動であり、その中心となっているエコカルチャー・マガジンのタイトルでもある。"Green Style Band"は、この活動を歌と踊りで広報するために、著名な振り付け師である南流石さんと、その教え子たちによって結成された音楽ユニットである。
2009年7月5日、パシフィコ横浜で開催されたグリーン・エキスポにおいておこなわれた、同ユニットのステージ・パフォーマンスを6台のビデオカメラで収録した。この中で、レパートリー曲『パパママ・プリーズ』と『ぶんべつロック』が披露されたほか、南流石さんのトークやダンスレクチャーなどが繰り広げられた。編集作業では、まず、この1ステージをノーカットで収めた<1ステージ編(36分56秒)>と、その中の『パパママ・プリーズ』の部分を抜き出し、これに歌詞のテロップを重ねた<パパママプリーズ・ステージ編(2分50秒)>の2つのバージョンを制作した。さらに、後者のクリップに、デザイナーのJunichiが創作した同ユニットの環境キャラクターたちをアニメ化して合成し、<パパママプリーズ・アニメ編(3分 19秒)>として完成させた。
キャラクターのアニメ化には、多数の動画像が必要となるが、その制作には情報文化学科基礎ゼミの1年C組と2年C組の学生たち(計17名)の協力を得た。まず、SMCから3年間の使用許諾のもとに提供して頂いた、キャラクターの原画(静止画像)の中から、動かしたい部分を切り抜いて画像加工ソフトを用いて変形させる。切り抜いた跡はペイント作業で補完し、背景は青や緑に塗りつぶす。こうして1枚の静止画像から複数の動画を作り出し、これを動画編集ソフトの上で展開して動画ファイルにし、クロマキーを用いてステージの実写映像と合成した。この際、P-in-P機能によって合成画面に大きさや移動の効果を加えたり、複数のキャラクターを多重合成するなどして、複雑なアニメーション効果を与えていった。
アニメーション制作に際しては、造型や色彩の統一的な管理が重要だが、プロの描いた原画をディジタル加工して多数の動画を多数の学生が分散処理で制作にあたるという今回の作業方法によって、多数のキャラクターが登場するアニメーション・クリップを当初計画の通りのスケジュールで完成させることができ、産学共同プロジェクトとして大きな成果を得ることができた。反省点としては、ステージ収録の際のカメラマンの意思疎通がうまくできなかったために、マルチカム編集の効果が十分に発揮できなかったことや、アニメの合成作業の際、キャラクターの個性(色や形、各キャラクターの意味合いなど)についての理解が浅く、上手く表現しきれなかったことなどである。
この作品を通じて、多くの人々の協力によって映像制作が成り立っているということを再認識した。自分一人の想いだけで作品を作るのと異なり、多くの視聴者に受け入れられる作品づくりの大切さと難しさを学ぶことができ、貴重な体験であった。また、環境問題に新しいスタイルで取り組んでいる"Green Style"の活動にも感銘を受けるとともに、映像によって、この活動のお手伝いができたことを嬉しく感じている。もっとも、大人たちが引き起こした環境問題の解決を、子どもたちにアピールするというのは、考えようによっては責任の押しつけのようで、少し複雑な気持ちもする。後の世代の子どもたちの頃には、環境問題とは「解決済みの過去の話」になっていて欲しいものである。