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伊藤 敏朗 ゼミ 平成21年度卒業論文
ドキュメンタリー『新潟音楽事情』の制作
長谷川 武晴

本作品は2009年12月、新潟のクラブ・ジャンクボックスにて行われた音楽イベント『A Fulcrum』の模様を、出演者のインタビューを交えつつ、映像で記録したものである。

このイベントは、主催者の田中暁央氏が、新潟から全国へ向けて音楽を発信していくことを目的に、2005年からスタートした。回を重ねるごとに出演するバンドの幅が広がり、今では県外や全国でも有名なバンドが出演するまでに成長したが、今回はあえて出演者は地元新潟のバンドのみに絞られた。田中氏には、新潟のバンドだけでも集客が見込めるという確信があったからである。

この番組の制作にあたっては、自分自身がかつてこのイベントに出演した経験があり、今回の出演メンバーにも知人が多かったことから、控え室の様子や開演前のメンバーに詳しくインタビューをするなど、密着取材ができた。演奏中は観客席からステージを撮影しながら、盛り上がる観客席にも時折カメラを向け、臨場感を高める工夫をした。演奏後には観客や主催者へのインタビューもおこなった。

編集では、新潟の雪景色や、過去に出演した有名バンドのスチルをインサートしつつ、ステージの進行に沿って構成し、10分弱の番組として完成させた。

この作品を制作してみて、準備の重要性や、出演者とのコミュニケーションの大切さをあらためて認識した。予期せぬアクシデントでタイムテーブルが変更されたために、インタビューをとれなくなるなどの事態も生じ、臨機応変な取材の必要性も感じた。またカメラ内蔵マイクを使って客席の最前列でステージを収録したことで音声が割れてしまい、ステージの演奏風景を、あまり作品の中にとりあげることができなかったのは、大きな反省点だった。

いっぽう出演者とは親しい関係でもあるだけに、インタビューでは、彼らの思いを深く掘り下げることができたと思う。打ちとけた語り口のなかにも辛らつな意見を聞くことができ、同時に彼らが地元・新潟に注いでいる愛着や、ここから自分たちの音楽を発信していこうとする強い意志を、ひしひしと感じることができた。東京などの大都市でなくてもバンド活動はできるということ、そして多くの観客を動員できるということを、彼らが実証してくれているのだと思った。このイベントが今後ますます発展していくことを確信できた取材であった。