ドキュメンタリー作品『国境を越えた結婚』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成21年度卒業研究概要集] [平成21年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成21年度卒業論文
ドキュメンタリー作品『国境を越えた結婚』の制作
根本 智江

本作品は、私の姉が、米国国籍の男性と国際結婚をしたプロセスに密着取材し、彼らが行わなくてはならなかった国際結婚の複雑な申請・許諾の手続きのあり方と、それをひとつずつクリアして想いをとげた新しい夫婦の心情を描いたドキュメンタリーである。

私の姉は、2000年に単身でアメリカの大学に留学し、その研究所の同僚だったアメリカ人男性とめぐりあい、その後4年の歳月を経て、2009年11月に念願の入籍を果たした。「国際結婚」と一口で言っても、その手続きのしかたは当該国どうしの法律によって異なるが、ことにアメリカでは様々な国籍を持つ人々が暮らしていることから、結婚手続きの方法に数多くの種類がある。姉のケースでは、米国国籍の男性と結婚はするが、アメリカに移住はせず、国籍は日本人のまま合衆国の永住権を得るという、やや変則的なものであった。本作はこのような姉の結婚で採ったかたちについて、詳しく描くこととなった。

2008年9月、日本に帰国した姉が、「健康診断書」の申請のために東京の病院へ訪れたところから、本作の撮影は開始された。翌年9月、婚約者の男性が来日した際、姉が彼に日本の文化を理解してもらおうと、那珂湊の魚市場や成田にある房総のむらに連れていく様子を同行取材した。そして番組の最後に、姉夫婦が互いの国の文化をどのように受けとめているのか、そして将来、子どもが生まれたときには、それぞれの国の文化にどのように接触させたいと考えているのか、などについて語ってもらった。

近年、日本国内での国際結婚率は増加しているが、中には日本に出稼ぎに来ただけの者と偽装結婚するケースなども含まれているとされる。国際結婚というものに、あまり好ましいイメージを抱かない家族や地域も少なくない。本作では、国境を越えて愛しあい、互いの文化を尊重しながら、二つの国家による厳しい審査を通過した上で、正当な結婚を果たしている人々がいるということを理解してもらいたいと思った。その申請手順は多くの機関に渡る複雑なものだが、それを姉夫婦がどのような手順でクリアしていったのかを、アニメーションも用いてわかりやすく示すことにつとめた。

反省すべき点としては、私自身が英会話が苦手で、あまり婚約者の男性とは対話ができず、姉の通訳に頼るばかりだったことである。そのためもあって、二人にインタビューするタイミングをうまく掴むことができず、彼らの心情を深いところまで追及できなかった。このようなテーマの取材では、言葉の壁は大きな問題だと感じた。

この作品制作を通じて、人が考えていることや思っていることを映像にして視聴者に伝えることの難しさを学ぶことができた。また、最初から台本ありきのドラマとは異なり、撮影・取材を進めながら番組としての構成を考えていく作業は、自分が本当は何を伝えたいのか、何を表現したいのかを深く考えさせられるものでもあった。今回の体験で、国境を越えた愛に生じる障害というものを、姉夫婦がどのように受けとめ、乗り越えていったのかが妹としてもよく理解でき、そんな二人を支えられるような存在でありたいと思った。