ドキュメンタリー作品『対馬沖における海洋調査研究』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成21年度卒業研究概要集] [平成21年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成21年度卒業論文
ドキュメンタリー作品『対馬沖における海洋調査研究』の制作
外岡 孔志

この作品は、東京情報大学環境情報学科の教授の浅沼市男先生と、そのゼミ生たちが、長崎県対馬沖で実施している海洋調査の模様を記録し、その研究活動について紹介したものである。

環境情報学科環境分野の地理情報システム研究室を率いる浅沼先生は、長年、海洋の植物プランクトン基礎生産力モデルに関する研究をおこなっている。2004年からは、人工衛星データから海中の植物プランクトンが、光合成をし、二酸化炭素を固定する現象の変化をとりあげている。さらに人工衛星から観測できない、深さ方向の水温や、植物プランクトンの分布を調べるために、沖縄沖や対馬沖で海水のサンプルを採水し、分析を行っている。人工衛星からの観測と船舶による観測で、中国の長江からの流入水が東シナ海を通る黒潮にどのように影響しているかを評価するために調査している。

番組の制作にあたっては、2009年9月4日から6日まで、浅沼先生とそのゼミ生たちとともに長崎県対馬に赴いて、調査活動の状況を密着取材した。調査前日、観測機器の準備に余念のない先生と生徒たち。そして翌日、漁船をチャーターして対馬の西海峡沖の海に出ると、観測装置によって海水を採水、このサンプルを宿に持ち帰りろ過するところまでを現地で撮影した。その後、サンプルは専門の調査機関に送って分析され、その結果が大学の研究室にもたらされる。ここで浅沼先生から、今回の研究調査活動の目的や成果について解説してもらって、番組をまとめた。

この作品で工夫したところは、このような専門性の高い研究調査活動の目的や方法などについて、一般視聴者でも理解しやすいように、調査活動のポイントや調査結果のデータについて、テロップやアニメーションの表現を用いて、わかりやすく描いている点である。また、漁船で海に出ての撮影となることから、撮影機材の防水のために自家製のカバーを準備して臨んだ。現場では波を被るようなことはほとんどなかったが、船酔いには苦しめられた。反省点としては、制作に着手する前のリサーチが不足で、番組構成を事前に組み立てておかなかったことで、調査活動の模様が的確にとらえられなかったり、構成上必要な映像素材が不足したことなどである。

この作品を通して、今まで知ることのなかった東シナ海から流れる黒潮の変化やその変化による環境への影響について、深く理解することができた。ドキュメンタリーの取材では、海や山などさまざまな現場の環境のなかで、的確な判断と撮影技術が求められるということがよく分かり、大変ではあったが貴重な体験をすることができた。撮影前のリサーチの重要性や、現地の状況にあわせた入念な機材準備の必要性、遠隔地に泊まりがけで取材チームが移動することの難しさや楽しさということもよく分かり、学ぶところの多い番組制作であった。