ドキュメンタリー『大学生が見た素顔の中国』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成21年度卒業研究概要集] [平成21年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成21年度卒業論文
ドキュメンタリー『大学生が見た素顔の中国』の制作
菅 健太

アジアの隣国同志である日本と中国だが、近年では、しばしばお互いの国を非難するような論調の報道や映像に接することが少なくない。しかし、マスメディアによって形成される相互の国家イメージというものは、果たしてどれほど正しいものなのであろうか。本作品は、この問題を検証するために、中国人の留学生と中国(上海)を訪問し、現地の人々の素顔や、率直な対日感情を描きだしたドキュメンタリーである。

番組の冒頭、人権問題や知的財産権の侵害、国境問題や戦時賠償などをめぐって日中のマスコミが非難の応酬を重ねていることを紹介する。しかし、ここで東京情報大学に留学中の中国人留学生、奚貝爾(ケイカイジ)君が登場して、「日本のことが大好き。だからここに来た」と語る。そしてカメラは、奚君とともに上海に飛び、現代中国の光と影の部分をルポルタージュしていく。奚君の親族から歓待を受け、中国人の大学生たちからも日本への好意的な言葉が寄せられる。つぎに現地に在留している日本人大学生たちにインタビューし、最近の市民レベルの日中の交流がとても良好なものになってきていることが明らかとなる。最後に、取材に同行してきた啓君が、「いま、中国は変わろうとしている。これからも日本と中国がもっと仲良くなっていって欲しい」と未来への希望を語って、番組を締めくくる。

本作は、2009年9月から10月にかけての15日間、上海を中心にロケをおこない、奚君の親族や友人の協力も得ながら取材範囲を広げていった。この過程で、経済発展が著しい都市の姿、そのいっぽうの混沌や貧困の様相をカメラに収め、偽ブランドのマーケットにも潜入取材した。そして現地の大学に留学中の本田正仁さんと出合い、南京大虐殺や文化大革命についても触れた重要なインタビューを収録することができた。

本作は学生の自主制作ながら、海外ロケを敢行したことで問題の実相に迫り、映像的にも力のある作品とすることができ、2009年度の千葉県メディア・コンクール(千葉県教育委員会主催)で優良賞を受賞するなど高い評価を得た。なお、コンテストに出品したバージョンでは、中国のテレビ放送で反日的な内容の番組が放映されているシーンが、著作権をクリアできなかったために割愛されている。また完成後の作品には、日本語のナレーション(菅健太)と中国語のナレーション(奚貝爾)の2つのバージョンがある。

世界一多い人口を抱える中国には、多様な考え方の人々がいるいっぽう、同国内の報道は厳しく統制され、さまざまなバイアスが加えられているが、日本から中国側に伝えられる報道でも、それと同じようなことがおこっている。われわれはこのようなマスコミ報道をただ鵜呑みにするのではなく、市民レベルの交流を深め、互いの思いを丁寧にくみとることによってこそ、正しい相互理解を深めることができるのだということを、本作を通じて訴えることができたのならば幸いである。