この作品は、千葉市の代表的な公共交通機関である、「千葉都市モノレール」の路線の概要や運用会社の舞台裏について紹介したドキュメンタリー番組である。
千葉市が政令指定都市への移行をめざし、交通インフラの抜本的整備を図る目的から計画・建設された「千葉都市モノレール」は、1988年に開業。懸垂式モノレールとしては、世界で最も長い営業距離を持つ鉄道としてギネスブックにも認定されている。「タウンライナー」の愛称で親しまれ、2009年には、累計乗車人数3億人を突破。千葉市民の足として、なくてはならない存在となっている。
番組ではまず、このような「千葉都市モノレール」の概要を説明し、建設中の写真を示しながらその歴史を振り返る。そして開通後、地域の利便性がいかに向上したかについて、沿線住民や学生などにインタビューして聞く。つづいて、同線を運行している千葉都市モノレール株式会社の職員の人々、その舞台裏の業務を紹介していく。本社ビルを訪問し、広報担当の小見さんの案内で、「中央指令所」「検修庫」を取材、それぞれの現場で働く職員の方々の説明を聞く。さらに、年一度のイベント「モノレール祭り」の当日の盛り上がりの様子、その舞台裏で走り回る小見さんの活躍を追う。その日の深夜、「軌道点検車」に同乗し、車両の安全運行のための取り組みを見る。最後に、千葉の空を元気に走りまわるモノレールの風景に、未来への期待を寄せるナレーションを重ねて番組をまとめる。
この作品のポイントは、通常なら入ることや見ることのできない鉄道会社の舞台裏の施設や仕事を取材して、そこで働く職員の方々が、一般的な電車とは大きく構造の異なる「懸垂式モノレール」を安全に運行することに並々ならぬこだわりと熱い想いを抱いて働いている姿を伝えようとしていることである。番組の中では、路線の建設中の写真、モノレールの懸垂構造の細部、「モノレール祭り」に向けての鉄道模型作り、深夜の軌道点検車の仕事ぶりなど、さまざまな「見せ場」を設けつつ、その流れに留意しながら構成したことで、最後まで視聴者に関心を持って見てもらえるものができたと考えている。
苦労した点は、青空を背景に快走するモノレール車両のカットをたくさん欲しいと思っていたが、天候や日照に左右されたり、ビルや看板など障害となる物を避けたアングルを探さなくてはならなかったことなどで、撮影にとりかかる季節の選択や、光や影の映りかたなどの大事さを痛感させられた。
取材中は、初めて見る鉄道の舞台裏の世界に興奮し、この驚きや感動を多くの視聴者にも感じてもらいたいと思って取り組んだ。しかし、ただ走行している風景を撮るだけでも、カメラを持って沿線を歩きまわり、車両が来るのをじっと待っては撮らなくてはならず、忍耐力、体力の重要性を再認識し、「自分の足で稼ぐ」「じっくり構えて待つ」ことの大切さを身をもって学んだ。そうやって集めた素材から、どのような魅力的なストーリーへと構成・編集していくかということにも悩まされた。最初から台本が作られているドラマとは違う、プロの現場の人々の「ドラマ」に接することができたことは、貴重な社会勉強であった。
なお本作は、2009年度千葉県メディア・コンクール(千葉県教育委員会主催)において、最優秀賞(千葉県教育委員会教育長賞)を受賞し、完成したDVDは千葉都市モノレール株式会社に寄贈して同社のガイダンス用ビデオとしても活用して頂けることとなった。