携帯電話と言えば、今や一人一台持っているのが当たり前、と言っても過言ではないほどに普及している家電製品だと言える。しかし、その利便性ゆえに、携帯電話を使用しながらの運転、歩行などによる事故が多発しているのも事実である。そこで、携帯電話を使用しながらの歩行はどのようなものであるかを調べた。被験者は男子大学生、身長171cm体重73kg、および身長160cm体重55kgと体格に差のある2名である。高さ2m、縦2m、横2mの空間で実験範囲を想定し、その空間内で被験者を歩かせた。被験者の前方と側面に一台ずつのカメラを設置して、その映像を元に3次元分析を行った。
被験者には、何も持たない「通常歩行」、重さ約2kgの荷物の入ったショルダーバッグを使用しての「負荷歩行」、負荷歩行の状態からさらに携帯電話を操作しながらの「携帯歩行」の3種類を行わせた。測定区間は右足の踵が接地してから再び右足の踵が接地するまでの2歩とした。分析項目は、重心の高さの変化、重心の左右の変化、歩幅の変化の3つとした。3つの項目において、それぞれの被験者の負荷歩行と携帯歩行の数値が通常歩行の数値とどう違うか、変化の仕方は変化しているか、といったものを比べた。
その結果、被験者Aは重心の上下の動きで約1.2cm、最高値と最低値の差が大きくなる、被験者Bは重心の左右の動きで数値の変化の仕方が不安定になる、などの変化が携帯歩行時に見られた。また、歩幅の変化においては被験者Aは約12cm、被験者Bは約7cm携帯歩行時は通常歩行時よりも歩幅が狭くなる、という結果が得られた。数値上だけの変化ではなく、携帯電話を操作しながらの歩行では視界は限られ、周囲に対する注意力も低くなる。このように携帯電話を操作しながらの歩行には様々な危険があると考えられる。