「環境問題」という言葉の変遷を新聞メディアを通して検討することによって、「環境問題」という言葉と現象がどのように変化してしまったのかを明らかにしようとした。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞のデータベースを用いて、過去の記事から「公害」⇒「環境問題」⇒「地球温暖化」、「エコ」といった変化が1970年代から現代にかけて変化していることがわかった。他方、「地球温暖化」についてその内容を身近な友人たちに聞いて見ると、言葉そのものは知っていたが、その中身はよくわからないという答えが多かった。こうした、言葉の内容の曖昧さがなぜ生じたのかを考えると、公害問題による企業社会への一つの対応がメディアの表現の中に見られたのではないかという仮説を立てることができた。つまり、経済の発展のためには公害対策などはやっていられないという産業界の意識が徐々に変化して、公害を商売にまで(利益になるものにまで)したことが、この言葉の変化にあったのではないかと考えた。もっとも、「公害」による影響や被害を「エコ」や「環境問題」が解決したわけではない。むしろ、それによって隠された事柄があるはずだ。残念ながらこの研究ではそれを明らかにすることはできなかった。