クレヨンしんちゃんはメディア展開によって肥大化し、新たな価値「家族愛」や「感動」といった付加価値が加えられ、いつしかギャグよりも付加価値が本質のように置き換えられたのではないかということを仮説として設定して、以下のような方法で考察した。
原作である漫画『クレヨンしんちゃん』1巻〜49巻をページ数、キャラクターの登場回数、扱っているテーマ、などの統計をとり、掲載誌の移動やアニメ放送の開始、海外での展開、アニメ映画のヒットなどの現実世界での事象とを比べながら、作品の変化を検証した。
その結果、大人向け漫画として始まり、子ども向けアニメとして放送を開始したことにより、クレヨンしんちゃんは国民的人気者になった。しかし、当初の生意気なしんのすけとは違い、今のしんのすけは大衆を意識した良い子になってしまった。
課題として、作品の変化を探るという長期的なテーマを設定してしまったため、現時点での途中経過に一区切りをつけるという形になってしまった。原作者の臼井さんがこの論文の作成中に不慮の事故に遭われてしまい、衝撃を受けたが、クレヨンしんちゃんにとっての最大の転換期であろうこれからについての多くが曖昧なままなことがもどかしい。