音楽にも、きれいな音楽、迫力のある音楽、しっとりした音楽といったように様々なジャンルがある。その中で、一般の人が癒されたい時に聴きたいと思う音楽はどのような印象を持つ音楽なのかを調査した。実験は、楽曲を聴かせて曲の印象、そしてその曲が癒されたい時に聴きたいか、という質問に答えてもらった。そして、その質問の回答から、癒されたい時に聴きたい音楽はどのような印象を持つのかを調べるため、重回帰分析を行った。
項目の選定は、昨年度のこの研究での分析を基に、印象評価項目を細分化した。印象評価で「きれいな」印象を持つ曲は癒されたい時に聴きたいという印象を持ちやすいということから、「きれいな」という印象をさらに細かく分け、「しっとり-かさかさした」「のどかな-せかせかした」「柔らかい-硬い」という印象を追加した。また、印象のみではなく、被験者個人の性格を評価してもらう7つの質問、ストレス耐性を答えてもらう4つの質問を参考文献を基に追加し、また普段どのジャンルの音楽を聴いているかを知る質問を評価項目に追加した。
結果は、印象評価のみでの重相関係数は、新しく追加した「しっとり」「のどかな」「柔らかい」という3項目を加えた分析が、加えなかった分析よりどの曲についてもわずかに高くなった。
そして性格判断を加えた時は、印象評価のみで重回帰分析を行った時より重相関係数は高くなったが、例えば肯定的な人ほど癒されたい時に音楽を聴きたい、といったような特定の結果が出てこなかった。よって被験者の性格は癒されたい時に音楽を聴きたいという評価には大きな影響を及ぼさないということがわかった。
そしてストレス判断を加えた時は、性格判断を加えた時と同様に重相関係数が高くなった。またその中で、特に病気になった時にストレスを感じる人ほど、癒されたい時に音楽を聴きたいという結果が得られた。
そしてどのジャンルをよく聴くかを加えた分析の時は、印象評価のみで重回帰分析を行った時の重相関係数の平均0.58より0.12ほど高くなった。ちなみに性格判断の時は0.07、ストレス判断の時は0.04であった。その中でもロック、ジャズ、ラテン、ワールドの曲は、それぞれのジャンルをよく聴く人ほど、癒されたい時にそれぞれのジャンルを聴きたい、という結果が出た。
最後に、癒されたい時に聴きたいと感じる評価に対して有意な影響を持つ評価項目のみで分析を行った場合、1曲ごとに見てみると、きれいな曲は癒されたい時に聴きたい、しっとりした曲は癒されたい時に聴きたい、と評価された。しかし、どの項目が癒されたい時に聴きたいか、に対して強く影響するかは曲によってばらばらになっていた。