この作品は、演劇活動に取り組む若者グループの活動の姿と、それを率いる主人公の心の内の葛藤を描いたビデオドラマである。
物語は、あるボランティアサークルの部長を務める主人公が、このグループで演劇をやりたいと言い出す場面から始まる。ほかの2人の部員は、主人公の我侭につきあうしかない。主人公が用意した台本は、『レイン』というタイトルで人と人との繋がりと命の尊さをテーマにした演劇であった。主人公の高校時代の友人や後輩にも助っ人として参加してもらい練習がはじまるが、主人公の我侭に付き合いきれなくなった女子部員がストレスの限界に達して家に帰ってしまう。ほかのメンバーから自分の非を諭された主人公は、その夜、彼女に謝罪の電話をいれる。その電話の中で主人公は、自分がこの芝居にどのような思いをこめていたかを明かす。それは主人公のつらい過去の体験と思い出であった。女子部員はその話を聞いて、再び主人公に協力する気持ちをとりもどす。やがて公演の前日をむかえ、主人公は仲間たちに感謝の言葉を述べる。翌日の本番へ向けて彼らを乗せた車が青空の町へと滑り出す。
この作品を通じて描きたかったことは、人は誰しも心の奥に、他人には言えない思いや苦しみを隠しているが、それでも他者と関わりあうことで、その壁を打ち破ることができるということである。
本作における主人公は、ドラマ前半ではコメディタッチで描かれ、周囲を唖然とさせるような我侭ぶりを発揮する。しかし、中盤で人間関係が壊れる瀬戸際にきたとき、シリアスな雰囲気に一転して、主人公の辛い過去の思い出が語られ、彼のもう一つの人間性が描き出される。そして周囲の者たちからの暖かい理解と協力によって、次の一歩を踏み出したとき、彼は確かな成長を遂げる。それまで雨が降っていた主人公の心が晴れ、ラストシーンの青空に重なる。それが本作のテーマ、"虹-雨あがる"なのである。
このような明確な枠組みのストーリーの上で、出演陣がそれぞれの登場人物を熱演してくれたことによって、本作は、はっきりとしたテーマを伝えることのできる、メッセージ性の高い作品になったと思う。
反省点としては、メンバーのスケジュール管理が徹底できず、当初構想したシナリオの内容を大幅に割愛しなくてはならなかったことで、主人公の高校時代の演劇活動の模様などを映像で表現できなかったことなどが悔やまれた。
制作中はさまざまな困難があったが、ゼミ生や友人の協力により乗り越える事ができ、その優しさがこの作品にも反映されている。作者として多くのことを学んだ。