本論は、中国におけるマスメディアの状況やその変容の過程を調査し、日本人が中国に対して抱くイメージ、また中国人が日本に対して抱くイメージというものが、メディアによってどのように影響されているのかについて研究したものである。
中国のマスメディアの制度や構造は日本と異なり、すべて共産党と国家の管理と指導の下で行なわれている。このことが、マスメディアにおける報道の手法や内容にどのような影響を与えているのかを明らかにする。つぎに、1995年からインターネットの普及によって、中国のメディアや世論がどのように変わったのかを示す。最後に日中関係において発生した幾つかの注目すべき事例をとりあげて、両国における報道の実態やそれが及ぼした影響について考察する。
多くの市民にとって、マスメディアが伝える情報は、世界を理解する上で最も重要なものであり、マスメディアの報道手法や内容によって人々の反応や考え方は大きく変わってくる。日中の国民の相互イメージの形成において、マスメディアが果たす役割は決定的なものがあり、報道の姿勢に偏りがあれば、無用な感情的摩擦が生まれることもある。グローバル情報化時代のあるべきマスメディアの姿について論考する。