この研究は、新潟の「レルヒ祭」と「高田城の観桜会」、京都の「天橋立」という3つの地域を題材としたコマーシャル映像を制作し、地域の魅力を引き出す映像表現のあり方について考察をおこなったものである。
「レルヒ祭」は、明治44(1911)年に日本に初めてスキー術を伝えたレルヒ少佐の功績をたたえ、日本スキーの歴史と伝統を紹介するイベントである。日本スキー発祥の地である金谷山スキー場で、当時のスキースタイルを再現した一本杖スキーの披露の他、モーグルやワンメイクジャンプ大会、地元の小学生による金谷山太鼓の演奏などがある。このCM作品では、子供から大人まで多くの人々が参加するイベントの楽しさというものを多くのカットをテンポよく積み重ねることで表現してみた。
「高田城の観桜会」は、上越市高田城の桜を見るイベントである。高田城の桜は、明治42年、旧陸軍13師団の設置を記念して在郷軍人会によって2,200本の桜を植えたのが始まりで、現在城内の公園には約4,000本がある。CMでは、桜の美しさを印象づけるために観光客の姿をできるだけ除いてさまざまなサイズの桜の花のカットで構成した。
「天橋立」は、陸奥の松島、安芸の宮島とともに、日本三景のひとつとされている。京都府北部の宮津湾にある、幅約20?170m、全長約3.6kmの砂嘴(さし)である。その形が天に舞う白い架け橋のように見えることから「天橋立」の名が付いた。このCM作品では、誰でも気軽に観光してもらいたいという狙いから、ホームビデオに撮ったような作品にするために、全て手持ちカメラで撮影し柔らかい雰囲気の映像にした。
こうして、それぞれの地域にふさわしいと思われるコンセプトを考え、表現技術を変えて制作したことで、特徴のある3本の地域紹介CM(各30秒)が完成した。
これらの作品制作を通じて、30秒CMという短い映像表現の中で、自分が見せたいと思うものや被写体となっているものの素晴らしさを表現するということの難しさをあらためて認識するのと同時に、その短い時間だからこそ一瞬で人を引き付ける技術の奥深さというものに興味が増した。これからも多くの地域に足を運び、一番よい季節を見つけて、多くの人に日本のよいところを紹介していきたいと思う。