リュック・ベッソン監督作品における日本人像の描写〜映画「taxi2」をめぐる一考察〜 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成20年度卒業研究概要集] [平成20年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成20年度卒業論文
リュック・ベッソン監督作品における日本人像の描写〜映画「taxi2」をめぐる一考察〜
清水 理皓

リュック・ベッソン監督の映画、『taxi2』は、2000年に、同監督による『taxi』シリーズの第2作として製作・公開されたフランス映画である。2作とも、物語の骨子は、主人公のタクシードライバー・ダニエルが、落ちこぼれ刑事のエミリアンを助けながら、凶悪事件を解決していくという娯楽作品である。

『taxi2』では、日仏サミットのために日本の防衛庁長官が訪仏するが、これを日本のヤクザが狙っているという情報がもたらされ、エミリアン達が長官の警護を担当する。しかし、厳重装備の護送車に長官を乗せての試運転中、日本のヤクザによって長官が誘拐され、これを救出するための警察側の行動が始まり、さまざまなアクションが繰り広げられる。パトカーが数十台もクラッシュしたり、敵役の車が戦車に衝突するなどふんだんな見せ場もあって、第1作目よりもスピーディな展開となって娯楽性が増した。

この作品で興味深いのは、劇中に描かれる不可解な日本人像、すなわちフランス人のイメージにおける日本人、日本文化というものの理解のされ方である。「ニンジャ」という言葉が濫用され、「こんにちは」を「コンニシュワ」と発音し、服装が他のアジア諸国風のデザインであることなど、日本人からみると違和感が抱かざるを得ない点が随所にある。そこで本研究では、本作におけるこのような日本人像が、フランスと日本との文化的交流の経過の中で、いかにして形成され、フランスの人々に受容されるようになったのかという点を切り口に、映画に現れる日本人のイメージと映画文化の交流について考察したものである。

本研究の検証と考察の結果、このような日本人像は、必ずしも誤解や偏見にもとづくわけではなく、フランス絵画史におけるジャポニズムへの流行にはじまる西欧側からの独特の親日的憧憬というものが根底にあること、これまでも「サムライ」など、日本の神秘的な雰囲気へのオマージュとして製作されたフランス映画の前例がさまざまあること、このような背景のうえで、「taxi2」では、リュック・ベッソン監督が独特な遊び心をちりばめ、日本の「ニンジャ」(というもののイメージ)の優れた身体能力を駆使した、新奇性のある洗練されたアクション映画というものを目指したものであったことなどが解明できた。