自主制作映画『淡い夏の恋物語』の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成20年度卒業研究概要集] [平成20年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成20年度卒業論文
自主制作映画『淡い夏の恋物語』の制作
黒須 徹也

この作品は、「アジア海洋映画祭イン幕張」アマチュア短編ビデオ部門に出品したもので、千葉県内の海水浴場で出会った男女の恋愛物語を、コメディ風に描いたものである。

「アジア海洋映画祭イン幕張」とは、2005年から毎年千葉県幕張で行われる海をテーマとした映画の国際映画祭で、長編作品のコンペティションと、アマチュア短編ビデオのコンペティションからなる。本作は後者に応募して、本選進出を果たした。

作品の内容は、夏の海岸に主人公・卓也ら3人の男子学生が、ナンパ目的にやって来るところから始まる。女子3人組を見つけ声を掛けてみると、そのうちの一人は見た目が強烈なニューハーフ・ますみだった。卓也に惚れたますみは、積極的なアプローチを仕掛けてくる。卓也は自分の頭の中で会議を開き、なんとかますみと一緒にならない方法を考えるが上手くいかず、逆に脳内会議にますみがやってきて一騒動起きてしまう。ここで場面は現実世界に戻り、夕方となって皆が帰路につこうとする中、卓也はまだまだますみの激しい求愛に追われる、というカットで終わる。

今回の映画祭は「海」がテーマなので、海での出会いを描いた物語とした。また、本作品のキーマンとなる人物はニューハーフだが、特異な人物としては描かず、女の子達は普通に接し、男子学生らはその強烈なキャラクターにたじろいでいる、という演出にした。限られた制作スケジュールだったため、勝山海岸でのロケは1日で60カット以上撮らなければならず、午前中のシーンを夕方撮影することになり、編集時に色の調整に苦労した。技術的な面では、卓也の脳内会議のシーンでアフターエフェクトによる合成処理を行ったが、同じカットに複数の卓也が登場するカットを撮る必要があり、かつ人物が重なってはならず、そのことを考慮しながら撮影することが難しかった。しかし結果的には満足すべき面白い映像となった。

映画祭における本作の評価は入賞であったが、それより上位の評価に結びつかなかったのは、「海」そのものには触れていなかったことが理由ではないかと考える。ただし長編コンペ部門の審査委員・二井康雄氏は、この作品が一番完成度が高かった、と好意的に評価してくれた。

この作品の制作を通じて、映画祭の主催者が意図するものをよく踏まえつつ、面白くて斬新な作品を作ることの難しさを学んだ。今回の映画祭に参加したことで、技術力もさることながら、アイディアやテーマというものがより大切であるということを感じた。