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伊藤 敏朗 ゼミ 平成20年度卒業論文
ミュージック・ビデオ『ファミレド』の制作
遠藤 清史

この作品はソニーが運営する動画共有サイト"eyeVio"が呼びかけたユーザー参加型ミュージック・ビデオコンテスト"eyeVio Music Video Tryout(eMTV)"に応募するために、歌手・木村カエラの楽曲『ファミレド』のミュージック・ビデオを制作したものである。このコンテストは玄光社の雑誌「コマーシャルフォト」や「ビデオSALON」とも連携して大規模に実施され、応募総数は93点であった。

本研究で制作した作品は、『ファミレド』の音楽をバックに、一人の女の子が踊っているシルエットから始まる。人影はカラフルな色で塗りつぶされ、イントロ・Aメロ・Bメロ・サビへと曲調が変わるごとに、歌詞に合わせたパントマイムのような振り付けを交えて、物語が進んでいく。はじめ、女の子は一人で寂しそうにしているが、歌の終盤ではその隣に男性が登場して一緒に踊る。最後は「あなたでよかったと、よかったと」という歌詞にあわせて、二人が見つめあい、結ばれるという表現にした。作品の長さは3分51秒であった。

この作品では、木村カエラの歌のもつ意味やその世界観を、映像によってよりわかりやすく楽しく伝えたいと思った。登場人物を実写のまま表現すると、見る人のイメージを固定してしまうように思われたので、これを色彩豊かなシルエットで表すことで、歌詞の持つイメージの広がりを活かし、色彩の躍動感を楽しめるような作品にしたいと思った。

本作を翔風祭で上映して観客からのアンケートをとったところ、「女の子の楽しそうな雰囲気が伝わった」、「映像(色彩)が綺麗だった」などの評価を多くもらうことができ、自分の表現したいものは伝わったのではないかと思った。ただ、作品の中では、女の子が一人で楽しそうに踊っているように見えて、実は寂しさも抱えているという人間の心の二面性について表現したいという狙いもあったのだが、観客には、ただ楽しく綺麗な映像としての印象だけが残ったようで、楽曲の持つメッセージを十分に伝え切ることはできていないようだった。

本作は結果として"eMTV"への入賞を果たせなかった。インターネットで公表された入選作にはコマ撮りやアニメーションなどの技法を駆使したものが多く、それに比べると本作は、アイディアやインパクト、技術的な面などで、やや物足りない感じがするのは否めなかった。

今回のこの経験から、普段は気軽に聞き流している音楽というものも、自分が表現者となってその楽曲にとりくんでみると、とても奥深い世界があるということがわかった。今後、ミュージック・ビデオを制作していく上では、歌詞の言葉の意味やメッセージをより深く理解し、的確なアイデアと技術で表現することで、自らの想いを伝えていくことが重要だと感じた。