アール・ヌーヴォーの感性と実用 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成20年度卒業研究概要集] [平成20年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
乾 照夫 ゼミ 平成20年度卒業論文
アール・ヌーヴォーの感性と実用
野澤 竜太

アール・ヌーヴォーとは、ヨーロッパで19世紀末から発達してきた美術様式の一つである。フランス語で「Art Nouveau」とは「新しい芸術」という名前に表されるように、それまでの芸術とは違うものを目指した様式である。実質的に主流となっていた期間は短く、1880年〜1900年過ぎまでの大体20年前後である。ガラス工芸品やポスター、建築や装飾品等の広い分野にわたり、ヨーロッパを中心に盛んとなる。アーツ・アンド・クラフツの影響を受け、工業と芸術の融合を試みる。植物や曲線を効果的に用いてそれまでの芸術とは一線を画したデザインであるが、それ故に厳密に定義する事は難しく地域や種類により作風が大きく異なる。特に地域の伝統と合わさって生まれている部分があり、国ごとの特徴が現されている。また、アール・ヌーヴォーの後にはアール・デコというアール・ヌーヴォーを引き継ぐ様式がアメリカを中心に生まれた。特徴は、自然の動植物をモチーフに使用している事や、曲線の美しさ、幾何学模様を活かしている事である。平面構成では大きく変化し、線や面による表現が世界を構成する力を持っている。何よりも、高い装飾性には驚かされる。それまでの芸術よりも個性的で美術性を高めた作品が多い。また、アフリカやアジアなどオリエンタリズムやジャポニズムなどの影響が見られ、今までとは異なる作風が見られる。後に退廃的な芸術等と言われ、モダンで無機的な現代芸術の前に衰退していったが、最近になってその美しさが認めなおされている。1900年過ぎには姿を消してしまったものの、現代デザインの基礎を作るなど密かに貢献している部分も多い。