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乾 照夫 ゼミ 平成20年度卒業論文
中華料理の発展と現状
謝 元媛

食は生きていると、つくつくおもう。時代とともに形は変わり、色や味も進化していくのである。 パリでは回転寿司が人気を呼ぶ。バンクーバーでは広東料理が幅を利かせるようになって久しい。どれも 本来の味ではないけれど、いずれも人々に受け入れられているようだ。中国でも、ここ数年、中華料理が目を見張るほど大きく様変わりした。 以前なら見向きもされなかったような雲南料理や湖南料理が北京で大流行し、上海では創作料理が持てはやされるようになった。中国各地で口にする中華料理の味は、以前に比べて格段によくなったのにも驚かされる。皿の盛り方も繊細さを増し、彩り鮮やかで個性的になった。肉も野菜も種類が増えて、見たこともないような素材にお目にかかることもある。味付けは、全体的に淡泊であっさりした薄味が主流である。脂っこさの代表格のような北京ダックですら、今では脂肪の少ないさっぱり味が受けている。人々がそれを望んでいるからに違いない。

社会の発展と料理の進歩は切っても切れない関係にあるのだろう。

鮮度を保ち、多種類の食材を迅速に供給するためには流通の発達が必要だし、調理技術が進歩するためには、食を楽しむ経済力と舌の肥えた人々がいなければならない。

その意味では、今まさに経済成長の真っ只中にある中国は、料理が大きく変化するのに相応しい時代を迎えているといえるに違いがいない。

食事に関するマナーも、食文化の変化と深い関わりをもっている。

例えば、中華料理の場合、箸は右側に縦に置くのが常識である。自分の手前に横に置かれる日本式とは、少し違う。箸の取り上げ方も中国と日本では異なっている。中国人は右手の甲を上にして、親指を手のひら側に折り曲げ、残った四本の指をまとめて箸に覆いかぶせて左側から絡め、親指を箸の下に入れて挟みこむようにして、一度取り上げる。 また、一度食べ始めたら、食べ終わるまで原則として箸を置くことはしない。箸を置くのは、食べ終えたことを意味するのである。だから、すでに箸を置いたのにもう一度それを取り上げて食べたりするのは、意地汚い行為だとみなされる。

料理の注文方法にも一応の目安がある。一緒に食べる人の数にプラス一品、それとスップを注文のがひとつの原則である。大皿に乗った料理を自分の皿に取るときには、目分量で自分の分だけを取り分ける。美味しいからといって、ひとつの料理だけを沢山取ってはいけない。と、まあ、中華料理にはこのような暗黙のルールがあり、外国人でも最低限のマナーとして知っておくほうがよいだろう。もっともこれとても絶対的なものではない。時代とともに少しずつ移り変わっていくのである。 そうすると、今、われわれが目の当たりにしている変化とは、果たしてどれほどのものなのだろうかと、気になってくる。過去と比べて格段に大きな変化なのだろうか。そしてこの先どこまで変化していくのだろうか。

中華料理の歴史は、長い。有史以来、中国の歴代王朝はそれぞれ料理に関する記録をふんだんに残し ている。食を辿ることは、人々の生きた軌跡を辿ることでもある。そこには、中国人の喜びと知恵が息つき、豊かな生活習慣が滲み出ている。さらには中国人自身も気付いていないような気質や国民性といったものまで、歴然と浮かび上がってくるのである。 今まで見えなかった角度から、中国人の姿を眺めなおしてみるのも、また興味深いものがあるのではないだろう。