2000年を過ぎた頃から、過去の漫画作品を作者自身が描き直すという行為を頻繁に目にするような気がして、違和感を覚え始めていた。2001年に、最も思い入れのあった漫画が"作者自身の手によって"新たな別の作品として描き直されたことで、その意識をより強めた。十数年前の作品とは物語が全く違うことに加え、絵柄も随分変わっているのに、登場するキャラクターとそれを描いている人間だけは同一人物であるという妙な状況に戸惑った。一度ハッピーエンドを迎え完結したはずの作品を、生みの親である作者自身に否定されたようで、憤りさえ感じた。ところが周りをよく見てみると、この作品以外にも似たような境遇の漫画がいくつもあることに気が付いた。
そこで私は、2000年前後にあったと思われる「作者自身による漫画の描き直しブーム」を裏付け、彼らがなぜ旧来の読者を敵に回すようなリスクを冒してまで、また多くの人に認められた作品を自ら壊すような真似をしてまで、過去の漫画を描き直そうとするのかを考察することにした。