ビルボードチャートにおける短調と長調の割合の時代変化 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成20年度卒業研究概要集] [平成20年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成20年度卒業論文
ビルボードチャートにおける短調と長調の割合の時代変化
吉田 宏則

日本人は悲哀、感傷を好む民族であり、それゆえ短旋法の音楽を好むと言われてきた。ところが明治政府は西洋音楽の導入に当たって「悲哀」、「感傷」の美的感性と、これに関連した短音階を古いもの、未開発国の音楽とし、学校教育から退けてしまった。

退けられた短音階の音楽は戦後歌謡曲において隆盛することになるが、近年のヒット曲において短旋法への好みは急速に少なくなり、消滅の危機に瀕している。これは単純に社会の変化を反映したものなのだろうか。

本研究は、日本の音楽チャートで行った研究を参考に、アメリカのビルボードチャートはどういった傾向にあったのか、その時代変化を踏まえて長調・短調の2つにヒット曲を分類し、比較と分析を行った。

研究の方法としては、日本の歌謡曲を研究したデータと比較するためにアメリカのビルボードチャートの1946年から2004年のヒットチャートTOP20を収集し、調べた。

判断の方法としては長調と短調の判断は非常におおまかなものであり、決して確実なものではない。それぞれの曲をできるだけ慎重に判断し、長調・短調と分けているが最終的に「明るい曲なのか、それとも暗い曲なのか」という動機で判断している曲も存在している。

分析の結果、日本とアメリカを比較してみると日本の歌謡曲は戦後の1945年から1984年まで短調の曲が非常に好まれて聞かれた。これをアメリカのビルボードチャートのデータと比較してみると、アメリカでは長調の曲が非常に好まれて聞かれていたのがわかった。

また、ビルボードチャートは年々長調の曲の割合が低下しており、短調の曲の割合が年々増加している。逆に、日本のチャートは近年短調の曲があまり好まれなくなくなっており、長調の曲が年々増加していた。近年の日本とアメリカのチャートのデータを比較してみると、どちらも長調が約65%、短調が約35%であり、同じような傾向にあることがわかった。