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西村 明 ゼミ 平成20年度卒業論文
人間のリズム検知限の研究-ドラム演奏音のハイハットのずれに着目した場合-
今福 英希

人間は音楽を聴いている時、雰囲気や音色など何らかの形でリズムを判断している。電子音楽においてはシーケンサーの登場により非常に細かく、正確にリズムを制御できるようになった。

では、人間は一体どこまでリズムの違いを判別できているのだろうか?

この研究は、人間がリズムのずれを判別できる限界、「リズム検知限」を明らかにする事を目的とする。

過去の研究では、バスドラム、スネア、ハイハットの3つの音で構成されたリズムパターンと、それのハイハットの偶数拍をずれさせたものを用意し、そのタイミングのずれを判別する実験をAxB法により8人の被験者に対し行った。リズムパターンはハイハットのズレの大きさが4種類、テンポが6種類の24パターンであった。

その結果、音符のズレが大きい方がリズムのズレを検知しやすく、テンポはリズム検知限には影響しないという結果が得られたが、実験回数が少なかった為に統計的な分析を有効に行えず、偶然そのような結果が得られた可能性もあった。

今回の実験では以前の研究結果を踏まえ、ハイハットのズレの大きさの条件を5種類に増やしつつテンポの条件を3種類に減らし、計15パターンの判断の繰り返しを1セットとした。こうしたのは、条件を必要最低限に絞る事で被験者の判断の繰り返し回数を増やし、より明確な結果を得る為だ。

被験者は、一般の人のリズム検知限を調べたかったので、楽器演奏経験等の有無を前提とせずに3人を選出し、3名で合計60セットの実験を行った。

その結果、リズム検知の閾値は、150BPM時の128分音符と160分音符の間、120BPM時の128分音符と160分音符の間、75BPM時の64分音符と96分音符の間にそれぞれある事が分かった。また、当然ながら音符のズレが大きい方がリズムを検知しやすいという事も分かった。

しかし何故か、音符のズレが小さい時の方がリズム検知をしやすくなっているという、常識的に考えて有り得ない結果も出ており、こうなってしまった原因としては、実験に使用したプログラムのバグ等が可能性としては挙げられる。

テンポの違いに関しては、前回の研究結果から、リズム検知限には影響していないと考えていたが、96分音符と128分音符の条件の時において、75BPMの時よりも120BPMの時の方が正答率は高く、有意差もあった。しかし、この結果は被験者の数が3人という限定された人数だった為に偶然に得られた結果だという可能性もある。これを回避するための今後の課題としては、被験者一人一人の判断の繰り返し回数を減らし、被験者の数を多く設定する事で、より明確な結果が得られるようになるだろう。