非日常を媒介にした自己同一性の研究-現代社会におけるコスプレ社会- [東京情報大学] [情報文化学科] [平成19年度卒業研究概要集] [平成19年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
圓岡 偉男 ゼミ 平成19年度卒業論文
非日常を媒介にした自己同一性の研究-現代社会におけるコスプレ社会-
貫井 恵里子

自分の好きなキャラクターの衣装を身に纏い、それに「なりきる」エンターテイメント、これは「コスチューム・プレイ」略して「コスプレ」と呼ばれている。「コスプレをする」ということは、単純にそのキャラクターの衣装を身に纏うだけではなく、その姿を撮影し、さらには自ら衣装を手掛けることまで含まれる。しかし、その本質はそれだけではない。キャラクターの持つ世界観を理解し、そのキャラクターに「なりきる」ことで、初めて「コスプレ」と呼ぶことができるのである。今日、「コスプレ」はテレビや雑誌などの各メディアでも頻繁に取り上げられている。特にアニメ・ゲーム系雑誌においてはコスプレに関するページも組まれるほどになった。また、店員がコスプレ衣装を着用してサービスを提供する飲食店が続々と登場している。その中で利益を目的としない、自主的にイベント会場へ足を運び、撮影を行っているコスプレイヤーが存在している。彼女たちはコスプレにどのような魅力を感じたのか。コスプレをすることの意味とは何なのか。

充実した気分転換をする1つの選択肢として「コスプレ」があり、コスプレはその人の1つの生き方の表現であるといえる。ゆえに、「コスプレをしている」という事実だけで安易に否定的な判断を下すことは、その人の生き方をも否定することとなるといえる。コスプレイヤーはコスプレイヤーなりにプライドを持って「コスプレ」を行い、そんな趣味に没頭する自分を広い目で寛容に見ていてくれさえすれば、それで良いと思っているのである。周りが必要以上に騒ぎ立てなければ、コスプレは世間の目を気にすることもなく、もう1人の自分を楽しむことができるのである。そして、また日常を新しい気分で生き生きと過ごせるのであるといえる。コスプレという非日常を媒介として、もう1つの自己同一性を体験できることに、人はコスプレに魅力を感じ、コスプレをする意味を見出すのである。