西尾維新と現代世界-オリジナリティはどこから生まれるか- [東京情報大学] [情報文化学科] [平成19年度卒業研究概要集] [平成19年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
柴 理子 ゼミ 平成19年度卒業論文
西尾維新と現代世界-オリジナリティはどこから生まれるか-
松永 暁和

西尾維新(以降西尾)は講談社が設立したメフィスト賞 を2002年に受賞してデビューした作家である。主にエンタテイメント小説を執筆している。西尾の経歴だが、多くは明かされておらず、分かっているのは、1981年生まれの現在26歳。デビュー以前は京都の立命館大学の学生であったこと、デビュー後、大学を中退したということ、メフィスト賞を受賞した当時、弱冠20歳だったということくらいのものである。

2008年1月12日現在までに西尾の著作は36冊。デビューしてから5年なので、すくなくとも年間7冊もの作品を発表している。

西尾の作品はミステリやライトノベルにジャンルされることが多い。作品のほとんどがノベルスで刊行されている。

ミステリは言わずと知れたエンタテイメントの王道「推理小説」である。殺人事件を題材とするものが多いが、ある事件の発生に対して合理的解決への経過を描いたものと考えると事件は殺人に限定する必要はないだろう。

ライトノベルは現在でも結論といえる定義は存在していないが、現状では「ライトノベル系レーベルから発売されている、アニメや漫画調のイラストを利用している作品群」ということで、完全ではないにしろ概ね区別できるような状態ではある。しかし、 そもそも「ライトノベル」とその他の小説との境界は曖昧であり、はっきりとした定義を持っていない。そのため現在も議論が続いている。

ノベルスで刊行されているにも関わらずライトノベルにジャンルされ、その読者層に受け入れられていること、また、ライトノベルにジャンルされることがあるにもかかわらず、一般の読者層にも受け入れられていることが西尾の人気を現していると言っていいだろう。しかし、ここで疑問に思うことは、「西尾の読者層の広さの理由はどこにあるのか」ということである。

この問題の解答を得るために、私は、文芸誌『ファウスト』 を初めとした西尾の対談やインタビューから西尾自身の人間像を、現在刊行されている35作品を読み進めることでその理由を探っていくこととする。

本論では第1章で西尾維新という個性、人間像について考察し、第2章で西尾作品について分析していく。第3章では私なりの考えを書いていくこととする。