バングラデシュにあるグラミン銀行がパイオニアのひとつとされている、マイクロクレジットが近年の開発戦略において注目を集めている。注目を挙げている理由は、貧困層に対し小口融資をし、返済率が90%を超え、貧困削減や利益を上げることによる組織自立の可能性など、さまざまな注目すべき要素があるからである。1997年にはNGO主催でアメリカのワシントンDCでマイクロクレジットサミットが開催されたり、国連が2005年を「国際マイクロ・クレジット年」と宣言をしたりと、その存在が重要視されていることが分かる。また、グラミン銀行とその創設者であり、総裁であるムハマド・ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞をとるなど、マイクロクレジットに対する世界的な評価は高いと言って良い。そして、マイクロクレジットを貧困削減に対する万能薬という見方があるほど、その効果を期待されている。しかし、評価が高い一方で一時的な処置でしかない、極貧層や障害者など貧困層の中でも特に貧しい人たちに対してその効果がない、などの批判もある。この論文では、現在のマイクロクレジットの評価と批判点の双方をふまえ、はたしてマイクロクレジットが貧困削減に対する万能薬なのかどうかを論じる。そこで、グラミン銀行のあるバングラデシュを主に見ることにより、マイクロクレジットの有効性を考察する。また、バングラデシュは多様な開発を行っている国である。そこで、緑の革命と輸出加工区という国の経済に大きなインパクトをもたらした二つの影響をみることにより、マイクロクレジットの効果をよりいっそう鮮明にする。