難民問題の解決に向けて -日本に求められているもの- [東京情報大学] [情報文化学科] [平成19年度卒業研究概要集] [平成19年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
柴 理子 ゼミ 平成19年度卒業論文
難民問題の解決に向けて -日本に求められているもの-
上屋舗 淳

2002年5月、中国の瀋陽の日本総領事館に北朝鮮からの5人の亡命者(難民)が、日本政府に保護を求めて駆け込むという事件が起こった。テレビには、亡命者を取り押さえる中国人武装警官が日本総領事館内に立ち入っている姿をはっきりと映っており、さらには日本の副領事がのんびりと歩いてきて、講義するのかと思いきや、中国人武装警官の帽子や女性亡命者の靴を拾うなどという緊迫感のない対応が全国に流れた。そして後日、副領事が亡命者から亡命を求める手紙を受け取っていながら英語も中国語も読めないという理由で返していたという事実、それを外務省調査の報告書から削除していたこと、さらに阿南大使が事件の数時間前に、亡命者は追い出せといったという事実が明らかになった。

日本は難民条約を批准しているにもかかわらず難民の保護が問題視されている。近年、難民問題が世界各地で深刻化し、テレビや新聞で頻繁に報道される昨今、日本は難民鎖国を脱し、先頭に立って活動していくべきではないだろうか。そのために今後どのような対応が、政府を含め我々国民に必要とされるのか。これまでの日本と難民との関係をふりかえり改善策を見出し、今後の解決策を考えていく。

第1章では難民の存在と題して、難民とはどのような人々を指すのかという定義や、難民とは言えないが、援助対象者という枠組みに含められている国内避難民、経済難民、帰還民、庇護希望者の定義、難民発生の歴史について論じている。

第2章は、1951年に発効された難民条約についての説明からはじまり、条約上の問題点や、改善していった経過を述べる。また、難民とはどういった人が対象になるのかという難民資格の一連の流れ、難民と認められるまでの認定の流れについて着目した。

第3章ではこれまでの日本の対応として、それまでは全く難民を受け入れなかった日本が、難民を受け入れるきっかけとなったインドシナ難民問題から始まり、インドシナ難民とは逆に、未だ1人も認定者を出していないクルド人難民について触れる。なぜ、受け入れないのか、そこにはどんな理由があるのか原因を調べてみた。そして、新たな難民問題として注目を集めている北朝鮮の脱北者問題について考察した。この脱北者問題では、日本の対応だけでなくアジア諸国や欧米諸国など各国の対応を含めた形で述べ、今後日本がとるべき対策を挙げている。

そして、最後に日本が難民に対して改善すべき問題点と、これから日本がどのように変わることができれば難民問題の解決につながっていくのか、政府だけではなく、我々国民一人一人に求められている事は何かを検討した。