この作品は、千葉県立成田国際高校が、2006年10月25〜27日に、県立水郷小見川少年自然の家で行った、合宿形式による英語セミナー「国際科セミナー」の模様を紹介したものである。
「国際科セミナー」とは、成田国際高校国際科の1年生を対象に行われる学校行事で、合宿に参加する生徒たちは、合宿中の2泊3日を、"ALT"(Assistant Learning Teacher=外国語指導助手)とよばれるネイティブの先生たちと一緒に英語漬けで過す。この間、日本語での会話は原則として一切禁止である。テキストを使っての勉強ではなく、英語で生活し会話することの楽しさを体で覚える、というのがその目的である。
番組では、まず、成田国際高校の2人の生徒が、少年自然の家の建物をバックに英語による自己紹介を行なう。施設にバスが到着して、たくさんの生徒達が降り立つ。さっそくALTから声をかけられ、戸惑う生徒の表情をカメラはクローズアップする。つぎに、レシテーション(暗誦)コンテストの場面となる。生徒たちの日頃の学習の成果が発揮され、同校の英語教育の水準の高さが示される。レクリエーションでは、気後れせずに会話を楽しむ生徒達の様子を追う。ALTがインタビューにこたえて、「英語を使うことの楽しさを実感して欲しい」とコメントする。いったんスタジオに戻り、レポーターが自身の体験や、学校の教育方針について述べる。そして2日目と3日目の英語によるディベート(討論)大会を迎え、楽しいだけではない、英語に対する真剣な生徒達の取り組み、そしてグループで協力し勝利を得たときの喜びの表情などを伝える。最後にスタジオで生徒達が、今回の合宿の感想や、英語を学ぶことの楽しさ、これからの夢などを語って番組は終わる。
この作品では、英語漬け合宿という集中的な学習環境の中で、熱心に、しかし自然体で取り組む高校生たちの姿を伝えたいと思った。高校生たちが英語で発表やディベートを行なったり、あるいはレクリエーションして遊んだりしている様子を紹介したことで、そのねらいは達成できたと思う。3日間の合宿の内容はとても豊富で、多くの事柄について削らなくてはならなかったことは残念であるが、今回の番組では、レポーターだけではなく、そこでめざましい成長ぶりを見せてくれた生徒や、将来の自分の夢について熱く語ってくれた生徒などの、イキイキとした表情を中心にストーリーをまとめていった。特に一人の男子生徒にスポットをあて、最初はALTに話しかけられても戸惑うばかりであった彼が、3日間のALTとのふれあいの中で変化し、徐々に自信を持てるようになり、最終日にはイキイキとした笑顔でALTと会話ができるようになるまでの過程を追ったことで、合宿の意義が強調され、番組全体を強く印象づけることができたのではないかと考える。
技術面では、この番組は、1台のカメラで取材にあたったのだが、カメラ台数の少なさを感じさせない機動的なカメラワークで、生徒達の生の表情を的確に捉えることができたと思っている。
この作品の評価については高校生レポーターの英語が素晴らしい、合宿初日うまく会話できていなかった生徒の成長が見えて良かった、みんな楽しそうだったというものが多かった。また司会者がぎこちないというものと、1年生だが表情豊かでとてもよかったという双方の意見があった。これは普段とは違い同ゼミの司会になれているMCではなく、大学1年生の新入生を起用したことで、経験の少ないことによる緊張などから硬さが出てしまったのではないかと思われる。しかし新入生を起用したことで今までに無い高校生と少し上の大学生という新鮮なスタジオでの掛け合いもでき、その点で表情豊かなスタジオの様子になったと思われる、また自らが見所があると感じたキャストを起用してよりよい番組作りを目指せた。そして興味はあってもなかなか機会のない1年生にもテレビ放送でのMCという経験をさせてあげられたのでよかったのではないかと考える。
技術の点では、カメラワークがいい、字幕のタイミングがあっていて見やすいという意見が多かったが、生徒達が合宿中に英語でコミュニケーションとっている箇所にも字幕を入れて欲しいという意見もあった。
この番組制作を通じて、高校生たちが、生まれた国の違う先生たちとの交流を通じて成長し、楽しさのなかにも真剣な表情で合宿に取り組む姿に触れることができ、一方で学校の先生やALTの皆さんが生徒を思いやる様子などもつぶさに見ることができて、とても感動した。
また、この番組では、学校行事の記録として入れなければならない要素、逆に注意深く表現しなくてはならない点などもあって、ひとつの映像作品として、どうバランスをとり、あるいは折り合いをつけていくかということも深く考えながら制作しなくてはならず、その点で、とても良い社会勉強になった。地上波テレビで放映されるということは、多くの視聴者、そして学校関係者の目に触れるということであり、自分がここはこう見せたいと思うところを強調しつつも、番組全体としての枠組みや制約を守りながら作品をまとめなくてはならず、そこにテレビ番組作りというものの本当の難しさがあるということである。そのことを時にプレッシャーとして感じることもあったが、こういう与えられた条件と状況のもとで、映像は何を伝えることができるのかを考え、さまざま工夫し解決していったことは、たいへんに意義深い体験であったと思っている。