この作品は、佐倉市で毎年行われている「佐倉時代まつり」について、高校生レポーターが実際に時代装束に扮装し、祭りの中心である時代行列に参加しながら、その祭りを紹介したものである。
「佐倉時代まつり」は、佐倉市の町おこしの一環として、1998年に始まった。お姫様や鎧武者などに扮装した総勢300人が佐倉の旧城下町を練り歩く時代行列は、この祭りの中心である。その行列を見ようと毎年全国各地から大勢の見物客が訪れて賑わう。8回目となる2006年は「佐倉の時代藩主」というテーマで行列が作られた。
番組では、まず、佐倉時代まつりについて、高校生レポーターがスタジオで簡単に説明した後、映像レポートにうつる。4月30日の朝、旧掘田邸に集合して、女子生徒はお姫様、男子生徒は鎧武者の扮装を身に纏う。ほかの参加者へのインタビュー、出陣前に歩き方や演舞を確認する団体などを紹介。やがて出演者は出陣式会場へと移動。そこで梯子乗りや鉄砲隊の実演などが華々しく行なわれる。いよいよ行列が出発。高校生レポーターが扮したお姫様や鎧武者たち、毛槍、鉄砲隊、新撰組などの行列が、時代絵巻さながらに市内を練り歩く。要所では鉄砲や大砲の発砲、斬り合い場面の実演などが行なわれ、沿道では和太鼓演奏なども披露される。時間をかけての行列を楽しみつつも、次第に疲労の色を浮かべる参加者たち。陽も傾きかけたころ、ようやく行列は終わり、旧堀田邸に戻ってきて解散式となる。一日の役目を終えた参加者たちの感想、記念撮影をしている団体など、皆が心から祭りを楽しんだ様子を見る。最後に、スタジオで、高校生レポーターが、「時代装束は重たくて、動きも不自由で大変だったが、沿道のお客さんにカメラを向けられて、すこしお姫様の気分を味わえた」、「鎧が重たくて、あんな姿で戦をしていたなんて信じられない」と述べ、司会者が「身をもって時代の重さを感じてきたということで、良い勉強になりましたね」と添え、来年は自分も鎧武者に挑戦してみたいと祭りへの参加意欲を述べ、これからの祭りへの期待を膨らませる。
この作品で描きたかったことは、このような楽しいイベントを通して、佐倉の人々が自分たちの地域の歴史を知り、交流を深めていく姿であり、それがほかの地域の人々にも伝わることで、さらに交流と愛情の輪がひろがっていくということである。時代行列が中心の祭りなので、それぞれの装束の特徴や働き、実演の様子を織り交ぜながら、実際に行列に加わっている高校生レポーターの表情を追うことで、臨場感溢れる映像にすることができたと思う。
時代行列は長く、取材場所が広い範囲におよび、それぞれの撮影ポイントに1台ずつカメラを置いたが、結果として各カメラのショットのサイズが似たものになってしまい、あまり変化のない映像になってしまったことは反省点である。見物客の多さも想定以上で、撮影場所の確保が思うにまかせなかったことが残念だった。
この作品の評価については、「レポーターが実際に時代装束に扮装し、参加者側からの視点でも祭りを見ることが出来たところが良かった」というものが多かった。また、「このような祭りがあることは知らなかったが、映像を見て参加してみたくなったと」いう意見もあった。このような評価があったのは、ただ祭りにおける行列の模様を写しただけでなく、準備の段階から参加者の視点でレポートできたからではないかと考える。
この作品の制作を通じて、事前に密に打ち合わせをすることや、下調べをすることの大事さを感じた。取材経験の少ないスタッフばかりではあったが、この取材を通して、機材の扱い方やどのように撮影すれば視聴者により分りやすく伝える事ができるかなどを、知ることが出来たと思う。また、必ずしも時間軸通りに編集することが視聴者にとって理解しやすいということではないという事を学んだ。