この作品は、東京情報大学の学生レポーター2人が、千葉県富津市の丘陵地帯に広がる有名な観光牧場「マザー牧場」を訪れ、牧場の魅力を紹介するとともに、その現場で羊の赤ちゃんの誕生シーンに立ち会った様子を映像レポートしたものである。
作品のオープニングでレポーターが満開の菜の花を紹介した後、牛の乳搾り、ビニールハウスでのイチゴ狩りなどを体験しながら、「マザー牧場」の魅力を紹介していく。次にレポーターは牧場内に建立された「仏母寺」を参拝する。「仏母寺」は同園創業者の前田久吉が、自分の母親のために建てた寺であり、ここでマザー牧場創設の経緯が語られる。続いてレポーターは「アグロドーム」での羊ショーを見物し、ショー終了後に羊飼いのスコット・スミスさんにインタビューする。ニュージーランドからやってきたスコットさんは、同園のすばらしさや楽しさについて語る。そしてレポーターはシープハウスを訪れ、かわいらしい羊の赤ちゃんの群れに歓声をあげるが、その日は、出産間近な羊がおらず、出産の場面を撮影することはできなかった。
数日後、あらためてスタッフとレポーターはシープハウスを訪れ、出産を控えた1頭のお母さん羊に密着する。安産とされる羊ではあるが、この日の出産は難航し、お母さん羊は相当苦しんでいる様子であった。取材にあたるスタッフとレポーターがハラハラしながら見守ること数時間、ついに赤ちゃんが生まれる感動の瞬間の撮影に成功する。最後に担当係の榎木さんに、羊の世話をするうえでの苦心談などを聞いて、レポートを締めくくる。
この番組では、千葉にこのような楽しい観光牧場があるということ、そして赤ちゃん羊の誕生の場面に立ち会うことを通じて、生命の尊さや大切さを伝えたいと思った。企画の当初では出産シーンのみで番組にする予定であったが、それだけではマザー牧場の魅力を伝えきれないと考え、前半では牧場の紹介、後半は羊の誕生シーンを中心にまとめた。全体的には、うまく起承転結の展開となり、完成度の高い作品になったと思う。
出産場面にいつ立ち会えるのかは、事前に予測がつかず、予定通りに撮影を進めることができなかったことは反省点ではある。あらかじめ予備日を十分に設けておけば、撮影にもより余裕が持てたであろう。シナリオが完成していないうちに撮影に入ってしまったが、事前にもう少し構成を組み立てておけば、取材活動上は合理的に動けたかもしれない。
この作品の視聴者からは、「羊の出産の場面に立ち会えたことがなによりもすばらしい」、「生まれた瞬間はとくに感動できた」などの意見を多くいただいた。「マザー牧場」の楽しさが伝わってきたという意見もあり、制作当初の目的は達成できたと思われる。「マザー牧場」の魅力だけにとどまらず、生命の尊さというものをどれだけ伝えることができるか、番組を製作する前には少々不安であったが、結果としての作品が、このように多くの視聴者に理解してもらえたことは、作り手としての大きな自信になった。