本研究は、近年使用者の増加が進んでいるキャリーバッグに着目し、通常の歩行動作との違い、利用による身体への影響の可能性、という点について動作の分析を行った。
被験者は東京情報大学に在学している男子学生2名(それぞれ被験者A、被験者B)とした。
被験者2名に通常の歩行と10kgの錘を入れたキャリーバッグを牽引しての歩行をそれぞれ行わせ、正面と右側面の二方向からカメラで撮影した。撮影した映像を画像化し、空間座標数値をとり、分析を行った。
分析の結果、重心位置や肩の高さに特に目立った違いが見られた。身体のバランスの中心を示す重心は、歩行時において左右へと振れる(人が歩行するとき片足で身体を支える瞬間があるため)、それによりスムーズな歩行を可能とするのだが、バッグ牽引時は乱れている。重心高に関して被験者Aは1〜2cm程度、被験者Bは1〜3cm程度それぞれ低くなっており、腰を落とした状態で歩行が行われていると想像できた。また、肩の高さは持ち手側のほうが被験者Aは2〜4cm、被験者Bは2〜5cm低くなり、身体がバッグ側へと傾いていることが読み取れた。
実験結果で見られた違いが、キャリーバッグは日常生活で頻繁に利用されることも考慮すると、バッグの持ち手側の体重負担を大きくし、腕や足の怪我を誘発することになるのではないかと推測される。本実験では大学生の被験者で実験を行ったが、より幅広い年齢層での被験者を用い、路面の影響等も考慮することで、より細かな分析が行えると思われる。