本研究は、弓道の射形である足踏み、胴造り、弓構え、打越し、大三、引分け、会を分析し、参考文献と比較・考察をしたものである。
被験者は高校3年間弓道を行っており、全国大会などにも出場しているが現在は弓道から離れている。この被験者に、幅2.52m、奥行き2.61m、高さ2.45mの空間を想定したエリアで動作させ、それを撮影した映像データをもとにDLT法を用いて分析に必要な画像や3次元数値を算出し、このデータから各動作局面を分析・考察した。
両肘の高さ変化の分析では、足踏みから打越しまでは両肘の高さは、ほぼ同じであった。しかし、実際に弓を引き分ける過程である大三から会では左右の肘の高さが変化し、右肘よりも左肘の高さが低くなっており、大三の時点で右肘約159cm、左肘約151cmと最大で約8cmの差が出ている。このことから被験者の肘は右肘よりも左肘の動きが早いと推測された。
射形ごとの重心変化分析では、足踏みから打越しまでで約7cmと大きく胸側に変化しており、足踏みから打越しまでの重心は安定してないと考えられる。大三の形をとったときに的側に約1cm変化しているが、的側に変化したのは大三の時だけであった。その後、引分けで背側に約1cm変化し、会で約3cm胸側に変化していた。
本実験では、被験者はほぼ文献どおりの動作を行っていたと考えることができる。しかし、的や矢を使用したものではないため、的と矢を使用し、離れまでの動作を行わせる実験を行うことが重要であろう。