第二次世界大戦以降に確立された日本型経営システムが、中国の経済発展、国有企業の改善、より優れた中国型経営システムの形成に与える影響を、日中双方のの経営システムと、文化を比較することによって明らかにするのが本論文の目的である。
国家の経営システムは、一方で、国内外や地域を取り巻く環境の諸条件及びその変化によって特徴付けられる。他方、企業組織固有の経営文化や、経営理念、企業構成員の価値観や態度が総合されて、国家規模の経営システムの特徴となっているとされる。本論文もそうした理論枠組みに基づき、日中合弁企業を事例として、環境・社会構造・文化、経営理念、経営管理、意思決定過程の面から考察を行った。
その結果、「経済の自由化」をめざしてきた中国にとって、日本型経営の経営管理制度の<思想>の導入が急務であることが明らかになった。すなわち、個人の共通属性に基づく中国の経営風土を理解したうえで、日本の共同体的集団による経営管理を取り入れることが求められている。残念ながら、そのモデルを提示するまでには至らず、今後の課題として残された。