マルチチャンネル収音方式と再生時の方向感および広がり感に関する研究 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成19年度卒業研究概要集] [平成19年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
西村 明 ゼミ 平成19年度卒業論文
マルチチャンネル収音方式と再生時の方向感および広がり感に関する研究
李 振耕

マルチチャンネルの研究は近年盛んに行われている。1992年には国際電気通信連合無線通信部門の勧告に5.1チャンネルの再生方式(ITU-R BS.775)が記載された。その後DVD-VideoやDVD-Audioメディアの登場により、マルチチャンネル再生が一般的になりつつある。更なるマルチチャンネルの普及には、コンテンツの製作が必要になってくる。そのため、マルチチャンネルの収音方法の研究が必要になってくる。しかし、異なる収音現場の音響特性、マイクの機種、音源の種類などの要因が多いため、普遍的な収音手法は未だ確立していない。

本論文は5.1チャンネルの再生方式(ITU-R BS.775)のフロント3チャンネルに対応する3つのマイクロホンの収録条件を検討した。先行研究では、左右マイクの距離が2m、かつセンターを双指向性マイクとして左右マイクの中心点より前方0.2mにおいた場合、良好な結果が得られているので、これらを踏襲して、マイクロホン条件を定めた。本研究独自の収録条件として、左右マイクの指向性、センターマイクから音源までの距離、全体のマイクの高さを取り上げ、本学メディア・ホールにて録音した場合、それらの要因が再生時の音像の方向と広がり感にどう影響するかについて調べることを目的とした。

収録では前述の3条件を組み合わせた8通りの収音方式により、5つの方向にあるスピーカーから再生したピングノイズを録音した。各マイクで録音した音を対応したスピーカーで再生し、9名の被験者に聞かせ、知覚された音像の両端の位置を数値で回答させた。回答データより、音像の方向と広がり幅を算出して、統計的な分析により、これらの収音方式の特徴を調べた。

本実験では、マイクロホンを近距離に置いた場合、マイクロホンから見たスピーカーの開き角が広すぎたため、再生時音像の方向と実音源の方向の差が大きく、マイクロホンの位置条件として適切でないと言える。遠距離の場合は、左右のマイクロホンとして、単一指向性マイクより無指向性の方が再生した音源の広がり幅が大きいことが分かった。また、全体のマイクの高さが2.3mの方が1.2mより再生した音像の広がり幅が大きいこと、全体マイクの高さが2.3mより1.2mの方が再生時の音像の方向と実音源の方向の差が小さいことも分かった。