音楽聴取による気分変化というものは、人それぞれ個人差があり曖昧なものである。だが何らかの動機によって聴いているということは確かである。この研究では、日常生活での楽しい気分・悲しい気分で音楽を聴く理由を、アンケートによる個人調査法で実施した後、集計されたデータより理由を分類した。
アンケートでの質問は、楽しいとき・悲しいときに音楽を聴く理由についてと聴くジャンルによって聞く前と聞いた後の気分がどう変化するかを調査したものであった。
問1では、楽しいときに音楽を聴くかどうかをはい・いいえの2択で答えてもらい、はいと答えた人には、理由も自由記述で書いてもらった。さらに、ジャンルとアーティストも答えてもらった。同じように、悲しい気分についても答えてもらうようにした。問3はジャンルで聞く前と聴いた後で気分がどう変化するかについて選択式で答えてもらうようにした。但し、問3については私の主な研究ではないため、この論文では問1及び問2の楽しいとき・悲しいときに音楽を聞く理由のみ分析を行った。
アンケート回収後、パソコンに入力し集計されたデータから理由の部分だけ印刷した。そして、理由1つ1つを切り取り、同じような理由ごとに並べ、さらに大きなカデコリーへと分類した。楽しい気分の場合では昂揚的利用が多くみられ、悲しい気分の場合では、気分の転換・注意の天導が多く、先行研究と比較して、同質性仮説的利用がやや少なかった。楽しい気分の場合は、同調的利用、昂揚的利用の2つのカデコリーに分かれ、悲しい気分の場合は、同質性仮説的利用、気分の転換・注意の天導、対症療法仮説的利用の3つに分かれた。