1991年に設立された日本プロサッカーリーグ(以後Jリーグ)は、「日本サッカーの強化」「スポーツ文化の振興」を目的としたプロサッカーリーグである。1993年5月15日にヴェルディ川崎×横浜マリノスの試合で幕を開け、今年で15年目になる。しかしながら、空前のサッカーブームとも言われ、大盛況でスタートしたJリーグであったが、長引く不況と選手年俸の高騰からJリーグクラブの経営危機が明らかになり、1998年には母体企業が撤退した横浜フリューゲルスと横浜マリノスが合併するなど、複数のクラブで相次いで支援企業が撤退することになった。また、野球界でも同様に、2004年に日本プロ野球パシッフィックリーグの近鉄バッファローズとオリックスブルーウェーブの球団合併に陥った。
Jリーグでは、横浜フリューゲルスの失敗より、企業を主体としたスポーツからの脱却を目指し1999年からクラブ経営に関する具体的な指針を打ち出し、安定した経営を目指した施策に取り組んでいる。また、市民スポーツ文化の先進国であるドイツのスポーツ事情を参考とし、地域に支えられる地域密着型のスポーツクラブのリーグを目指して「Jリーグ百年構想」という考え方を1996年に発足させた。全国のJリーグホームタウンでは、緑の芝生に覆われたスポーツ施設や広場を作り、サッカーを核に様々なスポーツクラブを多角的に運営している。スポーツを見る、スポーツをする、スポーツを通じて地域の人々との交流を深めるといったことや、年齢や性別に関係なく誰もがスポーツに触れ楽しめることができる「生涯スポーツ社会」というものを達成し、地域定着を目標に掲げている。そのためには市民と行政の積極的な協力が必要不可欠であり、市民や行政、企業への説明とそれぞれの理解が重要になる。ホームタウンにおける「生涯スポーツ」の達成と市民を巻き込んだ「街づくり」の活性化はJリーグの大きな存在意義であり、これからの日本社会にとって非常に貴重なものである。
そこで本論文は第1章にて、Jリーグの誕生と歴史、サッカーのもつ性質、そしてJリーグの仕組みと理念、百年構想の考え方の重要性をまとめる。
第2章では、企業を主体としたクラブ経営から脱却する事の重要性について、主に横浜フリューゲルスや日本プロ野球界と比較して論じる。
第3章では、千葉県千葉市と市原市に本拠地を持つJEFユナイテッド市原・千葉から地域密着型のクラブを模索し、クラブ関係者とのインタビューを交え、現在の活動・クラブが抱える問題点について他クラブの活動内容を紹介しつつ、論じる。
第4章では、これらを踏まえ、Jリーグ百年構想の可能性と課題、市民、行政、企業がどうあるべきか筆者の考えを交え論じる。