マレーシアの華人社会と言ったらどのようなことを想像するだろう。本論文では、東南アジアであるマレーシアにおける華人社会の変容を通して、マレーシアでは多民族民主主義国家なのかを論じたものである。多民族民主主義国家と多文化共生社会を創るには、如何なる対策や対応を取るべきなのかを考えたい。そして、どのような障害物に面着しているのかを、マレーシア華人社会を通して、マレーシアの全体的に、社会、歴史、教育、経済、政治などの結びついた視点から、考察していくのが本論文の研究目的である。
第1章では、「華人・華僑」に関する知識を踏まえて、マレーシア華人の歴史とマレーシア華人社会の特徴について、紹介した。マレーシア華人社会の形成初期と現在の状況が分かる。
第2章では、「マレー人特権」というものが如何に、「形成」、「確定」、「成長」三つの段階に至っていたかを考察してみた。それは、マレーシア華人との絡み合った関係で、「政治」、「社会民族暴動」、「教育」といった分野を通して、見えてくるのである。
第3章では、マレーシア現在の「消極的な共生」に着目した。マレー人特権の実施と思われるマレー人優遇政策(新経済政策)と、寛容的政策と、マレーシア民族構成の曖昧さといった三つの角度から調べてみた。
終章には、マレーシアにおける「多民族、多文化共生社会」の困難性を取り上げた。半民主政治体制の影響で、「より平等的な民主」が生みにくく、各種族の「コミュナリズム」が深刻になりつつであることは、一つの困難性である。もう一つは、未だに、進行中の「国民文化統合」に関係している。最後に、より民主主義国家に近い対策なども考えてみた。この二点をまとめて解消できれば、新たなマレーシアの真の民主平等、多文化共生社会が誕生できるではないかと思う。