この研究は現在伝統芸能として文化財になっている芸能「写し絵」について調べたものである。写し絵とは江戸中期にオランダから渡来してきた、現在の映画やアニメの原型となる幻燈機を当時の人々が独自に改良し、種板と呼ばれる独特の映写板を使用することにより映像を動かして芝居を演じたものである。庶民の娯楽として親しまれておよそ百年以上に渡り演じられてきたが活動写真の普及と共に急速に衰退していったその歴史や当時の職人の趣向を凝らせて作り上げた写し絵の技術について調べたものである。
またしばしば世界で最初のフルカラーアニメーションと呼ばれる写し絵について、現代のアニメーションや映画などといった現代視覚メディアとの表現方法やその技法についてどのような共通点や類似点があるのかを比較・考察し調べた。
現在の視覚メディアのルーツである幻燈機から派生した日本独自の芸能である写し絵は今日ではその存在すらほとんど知るものはいない。急速に普及し急速に衰退していった写し絵が本当に現在ジャパニメーションとまでいわれる日本のアニメーションに影響を与えたのかどうか私自身が知りたいと思ったのがこの研究を始めたきっかけであり、調べていくうちに明らかになってきた当時の人々の発想の豊かさに驚きながらも自分なりに調べられた研究であったと思う。