情報大ステーション2005第23回『ご自宅の耐震診断 僕らにおまかせ〜千葉県立市川工業高校建築科〜』(2005年 12月3日放映)の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成18年度卒業研究概要集] [平成18年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成18年度卒業論文
情報大ステーション2005第23回『ご自宅の耐震診断 僕らにおまかせ〜千葉県立市川工業高校建築科〜』(2005年 12月3日放映)の制作
吉野 幸広

この作品は、県立市川工業高校建築科の生徒たちが取り組んでいる、木造住宅耐震診断の活動を紹介したものである。同校の建築科は、平成15年4月より、建築科3年の課題研究において「木造耐震診断ボランティア」活動を実施している。その活動はメディアにも注目され、地域の安全と防災意識の啓発に貢献している。

作品では、まず、建築科の生徒達の授業風景から紹介する。ここでは、生徒達がパソコンを使って住宅の間取り図を入力し、住宅の耐震性をチェックできるソフトウェアの使い方を勉強している。次に、耐力試験の模様を紹介する。これは、実際に使われている木造住宅の壁の構造の一部を作り、それに圧力を加えていき、どのくらいまで変形しないで耐えられるかを測定するものである。その後、伝統的な木造建築の方法を学習するため、富津市の宮大工の工場を見学する模様や、一般の市民が自分の家の耐震性をチェックするための市民開放公開講座の模様を紹介する。スタジオで、公開講座の感想について述べたあと、再び映像レポートに戻る。そして、同校生徒による個人住宅の耐震診断の実地調査の模様を紹介する。生徒達は、一般民家の中に入り、床や柱が傾いていないか、鉄筋や筋交いはきちんと入っているかなど、家の隅々を調べ、その結果を家主に伝える。建築科の岩城先生、菊池先生のコメントを聞き、最後に県立現代産業科学館における講演会での生徒たちの発表の模様を紹介する。最後にスタジオに戻り、高校生が「今後も地域の防災意識の高まりに役立つように頑張りたい」と述べて番組をまとめる。

この作品で伝えたかったことは、専門領域をしっかりと学んだ頼もしい高校生達の姿である。近年、マンションの耐震偽装が社会問題となっている中、自宅の耐震性に不安を抱いている人々は少なくない。そうした中で、高校生が、進んで地域の安全や防災に貢献しようする活動は貴重なものだといえる。映像レポートの前半で、パソコンでの耐震診断ソフトの授業、耐力試験、伝統建築見学、市民開放公開講座などの場面を展開し、彼らの学習内容の確かさを踏まえたことで、後半の実地調査の活動の場面にも説得力が生まれたものと思う。高校生が民家の床下や屋根裏に入っていく場面では、高校生や先生に、ビデオカメラのナイトショット機能(赤外線撮影機能)で撮影してきてもらったもので、視聴者にもリアリティをもって伝えることができたと考えている。

この番組では取材対象がきわめて多岐におよび、また長期間にわたったため、取材スタッフもその都度メンバーがかわった。自分自身が現場を取材したのは1日のみで、他のスタッフが撮ってきた映像だけ見ても、何について示しているのかよくわからなかったり、建築の専門用語なども多く登場することから、テーマ全体を理解し、ストーリーを組み立てることにはたいへん苦労した。全ての取材を自分でおこなっていたら、自分の色というものがもっと出せたのでなかったかと思っている。

この作品の評価については、「耐震診断に関心を持っていたので、高校生が無料で簡易耐震診断を行ってくれるのはありがたい」、「高校生と地域の人々との交流の姿がとてもほほえましく思った」というものが多く、高校生達の活動内容を上手く伝えることができたと思う。また、「筋交いの説明が少しおかしい」という指摘もあり、自分の勉強不足を反省させられもした。

この作品の制作を通じて、シナリオ作りの難しさと、必要なカットとそうでないカットの見分け方がわかったように思う。テレビ番組というものは、いくら自分が理解しているつもりでも、初めて見る人が理解できなければ意味がないということを学んだ。また、映像に対する見方も変わったように思う。これまで何気なく観ていたテレビや映画に対して、この映像はどうやって撮ったのか、自分ならどうやって撮るかなど、作り手側のことを考えて観るようになった。そして何よりも、ひとつの作品を仲間とともに創りあげる喜びを知った。