この作品は、車椅子バスケットに全力で取り組み、世界一を目指している高校生(「千葉ホークス」所属・香西宏昭選手)の姿を追い、その学校生活や練習の風景、試合などの現場を、ディレクター自らがレポーターとなって取材したり、本人や関係者へのインタビューをおこなったものである。
香西選手は、千葉県立若松高校に通う高校生で、先天性の疾患により車椅子での生活を余儀なくされているが、車椅子バスケット選手として日本トップレベルのスピードを持ち、全日本代表として活躍している。香西選手が所属する「千葉ホークス」は、2年連続日本チャンピオンに輝く全国屈指の強豪チームである。
作品では、まず、千駄ヶ谷の東京体育館で行なわれた「内閣総理大臣杯争奪日本車椅子バスケットボール選手権大会」における千葉ホークスの準決勝・決勝の模様を伝える。次に、香西選手が通う県立若松高校を訪れ、香西選手の高校生活を紹介し、担任の先生、クラスメイト、香西選手本人にインタビューをした。続いて、千葉ホークスの練習場所である、千葉県障害者スポーツレクリエーションセンターを訪れ、練習風景を紹介し、香西選手本人と監督にインタビューした。最後に、埼玉県立大学で行なわれた「関東スーパーリーグ」を紹介し、香西選手本人、応援に来た方々、チームメイトにインタビューをした。
この作品で描きたかったことは、いきいきとスポーツに打ち込む高校生の姿である。車椅子というハンデを乗り越えて頑張っている姿を的確に表現することができ、番組の目的は達せられたのではないかと思う。試合風景の収録に際しては、様々な角度からのカメラで撮ったので、臨場感がよく伝わり、車椅子バスケットボールならではの迫力を表現できたと考ているが、常に激しく動くスポーツでもあるため、選手やボールを追いきれず苦労したところもある。また、番組テーマとしては、香西選手個人を中心としたものなので、全体としては、ややインタビュー場面が多くなってしまったようにも思われる。
この作品の評価については、「障害に負けず、何かに向かって打ち込む姿は感動」「香西君を丁寧に追って描いている」という意見があり、制作意図がきちんと伝わっていたと思う。いっぽうで「アップショットが多くて気になる」という意見もあり、映像的な迫力にややこだわりすぎてしまった結果ではないかと思えた。
この作品の制作を通し、障害者スポーツに対する見方が変わり、自分にとって大きな影響を与えられたと思う。障害ときちんと向き合い、スポーツに打ち込む選手を見て、壁に当たっても逃げないこと、積極的にチャレンジしていくことの大切さを学んだ。この番組を通し、選手の頑張りを見て、感動だけでなく、なにかしらの学びや気づきを視聴者に伝えられたのではないかと考える。