この作品は、県立市川工業高校の生徒たちが、自分達の学んだ知識や磨いた技術を活かし、「国際技術ボランティア隊」を編成してネパールに赴き、世界遺産ともなっているカトマンズ地方の伝統的建築物などを調査したり、現地の大学生たちと技術交流を行ってきた模様を紹介したものである。
この活動は、文部科学省による「目指せスペシャリスト」の指定校としての事業の一つとして、行われたものである。生徒達の現地活動の成果物である資料やデータは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)などに提供され、研究資料としても活用されるという、本格的な内容をもった取り組みである。生徒達は、これらの活動を通じて、将来の自分の仕事への誇りや自信を獲得し、技術を通じて日本とアジアの若者たちが交流し、高めあうことができるということを知る。
現地レポートの映像は、一行を引率した同校の先生方が、本学より貸し出ししたビデオカメラで撮影してきた映像を編集・構成したものである。番組は、飛行機の窓から見た外の風景から始まり、ネパール空港に到着、世界文化遺産に指定されるとともに危機遺産リストにも登録されている「カトマンズの谷」の町並みを紹介する。建物の外観や、飾り窓に施された精密な彫刻、そしてそれを彫る職人たちの工房などを紹介し、現地BTTC(国立バラジュ技術訓練校)やトリビュバン大学の学生たちとの交流の模様についても紹介する。いったんスタジオに戻り、自分たちが市川工業高校の電気科、建築科、インテリア科でそれぞれが学んでいることを語った後、再び現地映像となる。電気科の生徒によるBTTCでの合同実習、そして建築科、インテリア科の生徒による伝統的建築物の調査の模様を紹介する。最後にスタジオに戻り、高校生たちが、このネパールでの体験の意義などについて語る。
この作品のテーマは、自分達が学校で学んだ知識や技術を、国際貢献に活かそうと頑張る工業高校生たちの姿である。ネパールの珍しい風物や、現地での高校生たちの活動を記録した映像には説得力があり、番組のねらいは達せられたと思う。ただし、自分自身がネパールに行って撮影してきたものではないので、番組構成を考えたり、素材映像を選択することには苦労した。番組全体としてボランティア隊の活動日程の紹介にとどまり、ややメリハリに欠けた構成になったのではないかという心配をしていたが、現地取材した先生方からは、適切な場面を上手に構成しているとの好評を得て安堵した。
この作品の評価については、「異文化交流する高校生に驚いた」、「高校生の一所懸命さが伝わってきた」といったコメントが多く、番組のテーマがうまく伝わったことがうかがわれた。
この作品制作を通じて、専門技術を活かしてグローバルに活躍している高校生の姿に接し、自分も刺激を受け、有益な体験になったと感じている。
また、余談ではあるが、当3年生でネパールからの留学生、B.M.ニラジュ君が、この番組を見ていて、BTTCの合同授業の場面で、同校に通う自分の妹さんの姿が写っていて大いに驚いたという報告があり、その偶然性の確率に驚かされるとともに、われわれのメディア活動というものも、グローバルな広がりと接点を持ったものなのだということを認識させられることとなった。