情報大ステーション2005第7回『伝統の町並みを愛して〜佐原の伝統的町並み保存と案内ボランティア〜』(2005年8月13日放映)の制作 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成18年度卒業研究概要集] [平成18年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
伊藤 敏朗 ゼミ 平成18年度卒業論文
情報大ステーション2005第7回『伝統の町並みを愛して〜佐原の伝統的町並み保存と案内ボランティア〜』(2005年8月13日放映)の制作
鈴木 恵実

この作品は、佐原市における伝統的町並み景観の保存に取り組み、その案内活動などに取り組んでいる「町並み案内ボランティア」の活動について紹介したものである。

「町並み案内ボランティア」は、「NPO法人小野川と佐原の町並みを考える会」の活動のひとつである。同NPOのメンバーは、町並み保存や重要伝統的建造物群保存地区に関する制度を学習しており、その知識を活かして、観光客などを対象とした町並み案内を、ボランティアでおこなっている。

作品では、重要伝統的建造物群保存地区に指定された小野川周辺の旧い町並みを、同NPOの会長、吉田昌司さんの案内で行く。まず伊能家旧宅、伊能忠敬記念館と見学する。続いて、佐原の旧市街地を散策、店舗や民家を見学して行く。高校生レポーターは、町並み保存の歴史や保存条例の内容などの説明を受け、そこに暮らす人々の苦労や努力を知る。小野川には絶えず小舟が行き交っており、その中には佐原に古くから伝わる「佐原囃子」を演奏する下座連を乗せた船もある。そこには小学生の姿もあり、こうした伝統芸能が次の世代へと伝えられていることがわかる。最後に吉田さんにインタビューし、町並み保存を始めたきっかけや案内ボランティアの苦労などを伺う。映像レポートの最後は高校生レポーターが小舟に乗り、水上からの町並みの風景を楽しむ。スタジオに戻り、高校生レポーターが「美しい町並みを守りながら、そこに暮らしていくというのは、思った以上に大変なことだと思った」、「それでも、ふるさとの誇りを残していきたいという、皆さんの強い気持ちがかたちになったのが、佐原という町なのだと思った」と述べ、司会者が「(視聴者の)みなさんも、ご自分のふるさとを、改めて見つめてみては如何でしょう。きっと新しい発見がある筈」とまとめる。

この作品で描きたかったことは、ただ旧い町並みを歩いただけでは伝わりにくい、その地域に暮らしている人々の苦労と、それでもこの町並みを残していこうとする努力から垣間見える、故郷に対する愛情であった。また、今回の取材では成田高校放送部員が撮影スタッフとしても参加した。高校生が3台のカメラを担当し、高校生レポーターに近い視点の映像を撮影できたことも良い点だったのではないかと思われる。

この作品の評価については、「地域の文化を紹介する意味からよく構成されている」、「案内ボランティアという切り口から捉えたのが心をとらえる」、「映像がとても綺麗で是非訪ねてみたいと思った」というものが多く、番組の目的は達せられたと思った。

いっぽう、評価のなかに、「高校生レポーターの意見がもう少しあればと感じた」、「住んでいる人の感想を聞きたい」、「ボランティアの紹介に留まった感のあるのが残念と言えば残念」という意見もあった。吉田さんのハツラツとした人物像に焦点を絞って、観光案内としての視点から番組を構成したことが、このような評価がなったものと考えるが、実際にこの町に住む人々の本音や感想を取り入れることができれば、より説得力のある番組になったのではないかという点は反省点である。

この作品の制作を通じて、ひとつの物事を多面的に捉えることの必要性とその難しさを強く感じた。限られた時間の中で、物事に関わっている全ての立場の人々を映し出すことにより、その物事をより立体的に伝えることが出来るという実感と、その全てに気づけるかどうかの難しさ、大変さを学んだように思う。