華僑の歴史と社会 [東京情報大学] [情報文化学科] [平成18年度卒業研究概要集] [平成18年度ゼミのリスト] [ゼミ学生一覧]
石塚 省二 ゼミ 平成18年度卒業論文
華僑の歴史と社会
薄 玉菊

「華僑」は、中華本土(台湾、中国大陸、香港、マカオ)以外に住む海外僑民(本国以外に居留する国民)を指す呼称である。そもそも華僑という言葉が使われ始めたのは、1894年(清・光緒20年)以降のことで、その文字が示す通り、生活の糧を得るために海外に移住した早期の中国人は、いつの日か「衣錦還郷(故郷に錦を飾る)」ことを夢見て異郷で暮らしていた。

しかし、時は移り社会環境が変貌し新世代が登場すると、彼らの思いは次第に「落葉帰根(いずれ故郷に戻る)」から「落地生根(その土地に根を下ろす)」に変わり、そのまま居住国に留まり根をはり発展するようになったのである。

つまり、居住する国の政治・経済・社会・文化の組織形態の中で生存していく華僑の社会構造は、彼らの属する国情により生活方式や政治・経済・社会へ参画する活動様式も多種多様で、且つ居住国において所持する身分も異なることから、実に複雑化している。ゆえに、華僑というただ一つの言葉ですべての僑民を表すならば、包括性に欠ける感は否めない。