本研究は、体操競技の重要な基本技である倒立を体操経験者、未経験者に行わせ、被験者同士の動作を分析し、参考文献と合わせて被験者同士の比較、検討を行ったものである。
被験者は、大学生3名を対象にした。被験者Aは体操経験6年で、被験者B、Cは、体操未経験者である。被験者に10分程度のウォーミングアップ後、倒立を3回行わせ、可能なら5秒間静止するよう指示した。分析項目は、1.連続写真2.肩角度3.真上から見た身体重心4.膝角度とした。
連続写真では、被験者Aは倒立ポイント時、手と脚が地面に対して垂直に近い結果となった。また、身体全体が鉛直方向に伸びており、顔が床に向いていた。被験者Bは、身体全体が鉛直方向に伸びておらず、手と脚が地面に対して垂直でなかった。被験者Cは、身体全体が鉛直方向に伸びておらず、脚が地面に対して垂直でなかった。
倒立ポイント時の肩角度では、被験者Aの左右の肩角度差が、約2°と最も狭かった。被験者Bは、約5°、被験者Cは、約9°であった。理想の倒立は、肩角度を拡げることであり、未経験者である被験者Bは、肩角度が被験者A、被験者Cに比べ、小さかった。
真上から見た身体重心の軌跡では、被験者Aは両手首中央に重心を持ってきていて、重心が安定していた。被験者B、Cは、片手首の距離が重心から遠く、重心が安定していなかった。
倒立ポイント時の膝角度では、被験者Aの左右の膝角度差は約4°、被験者Bは約1°、被験者Cは約3°であった。被験者A、B、Cの両膝角度の差は少なく、膝が地面に対して垂直に近かった。
実験結果から、経験者である被験者Aが参考文献の条件を最も満たしていた。やはり倒立は体操競技の中で、重要である基本技であるので、経験を積むほど理想的な倒立に近づくのではと、考えられる。